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国内賛成派は8割近く…日本の常任理事国入りへの賛否の実情をさぐる(2019年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ テレビでもよく見かける安全保障理事会。その常任理事国入りを日本は望むのか。(写真:ロイター/アフロ)

定期的に話題に上る、日本の安全保障理事会における常任理事国入りの賛否。実情として日本ではどれほどの人が賛成、反対しているのだろうか。内閣府の「外交に関する世論調査」(※)から確認する。

国連の主要機関の一つである安全保障理事会は、常任理事国5か国と非常任理事国10か国から構成されている。前者はアメリカ合衆国・ロシア・イギリス・フランス・中国で不動だが、後者は2年単位で改選が行われる。今件に関して日本が安全保障理事会の常任理事国に加わるか否かについて、どのような考えを持つのかを「日本国内で」尋ねた結果が次のグラフ。直近では賛成が35.8%・どちらかといえば賛成が43.2%となり、合わせて79.0%が賛成派との結果になった。

↑ 日本の国連安全保障理事会の常任理事国入りについて(2010年以降)
↑ 日本の国連安全保障理事会の常任理事国入りについて(2010年以降)

反対派が少ないのは赤系統色の面積が小さいことからも明らかだが、明確な反意を意味する濃いオレンジ部分がわずか1.5%なのに注目したい。賛成派はその内部では半数近くが明確な賛意なのに対し、反対派の明確な反意はその内部での2割強。

賛成派(賛成+どちらかといえば賛成)・反対派(反対+どちらかといえば反対)・分からないに区分し、過去の調査結果の推移をグラフにしたのが次の図。

↑ 日本の国連安全保障理事会への常任理事国入りについて(簡易表記)(1994年以降)
↑ 日本の国連安全保障理事会への常任理事国入りについて(簡易表記)(1994年以降)

一番古い調査結果となる1994年の時点ですでに賛成派が過半数に達しているが、意思を決めかねる人も3割近くいる。そして年々「賛成派増加」「分からない・反対派が減少」の流れで進んでいくものの、2003年から一時的な「賛成派の減少」「反対派の増加」が確認できる。これは2003年のイラク戦争、そしてその後の平和維持活動によるところが大きい。しかしその流れも数年で収まり、再び「賛成派の増加」で状況は推移しつつある。

調査範囲期間内では2010年でピークを迎えた「賛成派」だが、2011年には大きく減少している。これは2011年3月に発生した東日本大地震・震災に伴い、国内情勢が不安定なものとなり、「常任理事国入りを検討するのは後回し、余裕など無い」という思惑が生じた結果の動きと考えられる。しかし復興が進むに連れ、心境的に余裕も出てきたこともあってか、再び「賛成派」は増加の動きを見せた。

だが2013年をピークに「賛成派」は7割後半に戻ってしまっている。昨今の国連本体や関連機構における判断内容に関する懐疑感の高まりや、実行力の低下を受け、常任理事国入りへの意義を判断しかねる、否定的判断をする人が増えている可能性はある。

今後、仮に常任理事国の定数が増加するにしても、立候補した、あるいは推挙された国自身の意思だけで、増加分の国が決まるわけではない。さまざまな他国の思惑が絡んでくる。常任理事国、そして国連そのものの存在意義の再確認・再検証が求められる中、今後日本の国内世論がどのような変化を見せて行くのか、気になるところではある。

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※外交に関する世論調査

2019年10月19日から10月30日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を有する人の中から層化2段無作為抽出法によって選ばれた人に対し、調査員による個別面接聴取法によって行われたもので、有効回答数は1608人。男女比は748対860、年齢階層別構成比は10代38人・20代126人・30代166人・40代262人・50代263人・60代299人・70歳以上454人。過去の調査もほぼ同様の様式で行われている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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