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保護者の子供への「携帯の学校への持ち込み禁止」「携帯はまだ早い」の思いの実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 「目の前で操作するのなら」と考える保護者もいるのだろうが…。(ペイレスイメージズ/アフロ)

・小学生から高校生を子供に持つ保護者が「小中学校へは携帯電話を持ち込ませない」とする意見に賛成する割合は28.4%(2017年)。

・「各家庭で小中学生には携帯電話を持たせないようにする」は16.3%。

・「小中学校へは携帯電話を持ち込ませない」「各家庭で小中学生には携帯電話を持たせないようにする」ともに2014年から2015年にかけて増えることがあったものの、大よそ賛成意見は減少する傾向に。

多様な機能を持つ携帯電話だが、相応の常識や判断力、自制心、そして十分な知識と経験が無いと、トラブルに巻き込まれるリスクもある。保護者は子供の携帯電話保有利用などにどのような思いを抱いているのか。その実情を内閣府が2018年3月に確定報を発表した、「青少年のインターネット利用環境実態調査」(※)の公開値から確認する。

今件項目は小学生から高校生を子供に持つ保護者を対象にした調査。大人全員への調査では無いことに注意。その調査対象母集団に対し、「小中学生は学校に携帯電話(従来型携帯電話やスマートフォン)を持ち込むことを禁止」「小中学生へは携帯電話を持たせない」との意見について、同意するか否か(同意の場合のみ回答。非回答者は単に同意していないだけで、否定か意見留保かは今設問からは判断不能)を尋ねた結果が次のグラフ。

なお「小中学生へは携帯電話を持たせない」は設問では「各家庭で小中学生には携帯電話を持たせないようにする」とのみ記述されている。これが小中学生に携帯電話を所有させない(保護者から借り受けて利用すること、利用においては保護者の監視下とすることは問題無しとする)を意味するのか、それとも利用すら許可しない(保護者からの借り受けによる利用すら認めない)のかは解釈が分かれるところではあるが、事実上は後者を意味すると解釈してよいだろう。

↑ 子供のインターネット利用に必要な取り組み(2017年、一部、保護者回答、複数回答)
↑ 子供のインターネット利用に必要な取り組み(2017年、一部、保護者回答、複数回答)

全体では「持ち込み禁止」は28.4%、「持たせない」は16.3%が同意を示している。寛容と見るか厳しいと見るかは人それぞれだが、少なくとも7割強は、小中学校への携帯電話の持ち込みについて「否定的では無い」ことになる(肯定か意見留保かは別の話)。

子供の学校種類別では設問で該当する年齢の子供を持つ保護者の意見はほぼ同率だが、高校生の保護者になると「持ち込み禁止」に同意する意見は大きく減る。自分の子供が大きくなり、実際に携帯電話(特にスマートフォン)を持たせた結果、過剰な心配は要らないだろうとの判断の上での回答結果なのかもしれない。あるいは単なる「のど元過ぎれば熱さを忘れ」の可能性はある。

経年データを基に生成したのが次のグラフだが、「持ち込み禁止」「保有禁止」ともに昔ほど規制を求める声が強く、最近になるに連れて規制には賛同できない人が増えていた。

↑ 子供のインターネット利用に必要な取り組み(一部、保護者回答、複数回答)
↑ 子供のインターネット利用に必要な取り組み(一部、保護者回答、複数回答)

2009年時点では4割強が「持ち込み禁止」、1/4以上が「保有禁止」に賛同していたが、2014年ではそれぞれ3割足らず、1/6程度にまで減少した。理由について報告書には何の説明も無いが、周囲環境の変化(実使用者の増加、啓蒙の強化など)に加え、保護者自身も携帯電話を利用している事例が増え、安心感を覚えているのかもしれない。

「持ち込み禁止」は減少率がゆるやかだが、「保有禁止」は確実に減りつつあった。小中学生の携帯電話、特にスマートフォンの所有率が上昇傾向を継続しているのも、保護者側が保有に対して寛容になりつつあるのが一因といえよう。

ところが2015年はこれまでの動きから転じ、持ち込み・保有双方ともに禁止に同意する意見が増加する動きを示した。携帯電話と子供の間に関わる事件や問題が保護者の意識に影響した可能性はある(確認したが2014年と2015年の調査票に違いは無い)。とはいえ2015年以降は再び減少していることから、大勢には変化は無いと見てよいだろう。

なお直近年における回答者の年齢別動向は次の通りとなる。

↑ 子供のインターネット利用に必要な取り組み(2017年、一部、保護者回答、複数回答)(保護者父母・年齢階層別)
↑ 子供のインターネット利用に必要な取り組み(2017年、一部、保護者回答、複数回答)(保護者父母・年齢階層別)

総数では母親の方が大よそ厳しい。また父母ともに大よそ年が上になるほど厳しい結果が出ている。母親で40代がもっとも厳しいのは、実際に自分の子供が該当する年齢の場合が多いからかもしれない。

ともあれ、子供の携帯電話の利用スタイルに関して、父母別、さらにはその年齢によって姿勢に違いが見られるのは興味深い話ではある。

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※青少年のインターネット利用環境実態調査

直近年度分は2017年11月3日から12月3日にかけて2017年11月1日時点で満10歳から満17歳までの青少年とその同居保護者それぞれ5000人に対し、調査員による個別面接聴取法(保護者は訪問配布訪問回収法)で行われたもの。時間の調整ができない場合のみウェブ調査法(保護者は加えて郵送回収法)を併用している。有効回答数は青少年が3288人(うちウェブ経由は122人)、保護者は3469人(うちウェブ経由は44人、郵送回収法は26人)。過去の調査もほぼ同じ形式で実施されている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更を加えたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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