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【インタビュー&全曲解説】artとmusicを融合する東京発のクリエイティブ・ユニットam8

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
am8 / photo by am8

●謎めいた存在感を時代に刻みつけたユニットam8とは何者か?

2020年10月21日、なんの前触れもなくストリーミングサービスにアップされた、音楽ユニットam8(エーエム・エイト)によるデビュー曲「Florian ft. HANA+Kaori Takeda」は衝撃だった。

懐かしくも新鮮なレトロフューチャーな音世界。たゆたうように儚くも優しいメロディー。トラップやアブストラクトのフィーリングを経由し、低音の効いた今の時代性を感じる絶妙なるビートセンス。耳を奪われる機械音、金属音のサンプリング。溶け合うように優しく囁かれる、HANAとKaori Takeda(武田カオリ)による清らかな歌声に心を鷲掴みされたのだ。

シンガーふたりの組み合わせのセンスにも驚かされた。HANAは、ROTH BART BARONによる「けもののなまえ feat. HANA」に参加したことで注目された現在14歳のシンガー。武田カオリは、ソロ活動はもちろんSilent Poetsプロジェクトや、1999年ギタリストの石井マサユキとユニットTICAを結成して活躍する実力派シンガーなのだから。

結果、たった1曲で、Spotify人気公式プレイリスト『Tokyo Rising』、『New Music Wednesday』、『Early Noise Japan』、『キラキラポップ:ジャパン』などにリストイン。謎めいた存在感を時代に刻みつけたユニットam8とは何者なのだろうか? 

●12月2日には、8曲入りアルバム作品『iDoM』をリリース

その実態は、広告界隈で活躍するクリエイティブディレクター / アートディレクターの手島領(螢光TOKYO、 DESIGN BOY)と、音楽ディレクター / プロデューサーの冨田恭通(マジカルコンプリーター)による、artとmusicを融合する東京発のクリエイティブユニット。クローズドハイハットの16分3連音符の配置により構成されるグラウンドビートや、テクノ、エレクトロポップ、ダブを織り成す中期YMO以降の音楽的挑戦。どこかしらArt of Noise、坂本龍一イズムを感じるセンスが、作品からリファレンスとして伝わってきた。

先行配信ナンバーを挟み、12月2日には8曲入りアルバム作品『iDoM』がアナログ盤(HMV record shop)&配信にてリリースされる(ボーカル曲6トラック、インスト曲2トラック)。なお、デジタルディストリビューションは先行シングルに続いて、音楽シーン最前線で注目されているFRIENDSHIP.からのリリースとなる(←2020年代DX化された音楽シーン、最重要注目ポイントのひとつ!)。

am8『iDoM』/ photo by am8
am8『iDoM』/ photo by am8

●作品には海や森、虫、鳥など自然音がミックス

人との距離が制限されたコロナ禍におけるニューノーマルな時代。アルバム作品においてam8は、こんな時代だからこそ、夏木マリ、斉藤ノヴ、高浪慶太郎 (元ピチカートファイヴ)、武田カオリ、HANA、XAI、ADD(ORESKABAND)という、豪華ゲストクリエイターをキュレーションして、自らのアルバム表現に理想とする付加価値を加えていく。それはまるで未曾有の危機を迎えた2020年に許しや癒しを与える、架空の映画のサウンドトラックのようでもある。

am8の音楽は“アブストラクト(抽象)”且つ“アンビエント(環境)”をモチーフに、様々なジャンルが溶けていく。世界的に外出が制限された時代を憂うべく、作品には海や森、虫、鳥など自然音がミックスされ、聴くたびに“ハッと”した感動や驚きを与えてくれる。2020年、あなたのハートに届いて欲しい奇跡の1枚なのだ。

<独占 am8 初インタビュー>

――am8、謎めいた存在感がありますが、ユニット結成のきっかけを教えてください。

手島:令和時代のはじまりとか、2020年とか、自分自身もキリの良い年齢になったし、いろいろ重なったこのタイミングに記念的ないものを作りたいな、と。僕はこれまでずっとビジュアルに関わる仕事を生業にしてきたけれど、この際一度ドップリ音楽的アプローチをやってみたい、と冨田くんに相談したのがきっかけだったかな、と思います。

冨田:昨年の春ごろかな、具体的な楽曲デモを持ってきてくれて、それを聴いたあたりでしょうか、自分たち自身の作品を作りたい、というふうになってきたのは。そこから本格始動したように記憶しています。

――アルバム『iDoM』、素晴らしいアルバムとなりました。完成されてみて、アルバム全体像について一言ずつご感想を教えてください。

手島:すべて手探りで始めたんですけど、最終的には渾然一体となった。その事に作った本人も驚いています。はじめは自分が好きな音を何の制約も無く重ねていって自分だけ楽しければいいや、くらいの何とも青くさい気持ちでした(笑)。こうして仕上がってみて、これは同時代を生きる多くの人に聴いて頂きたい、そう思える作品になったと思います。

冨田:一曲試しに作ってみますか、というところからはじまったのですが、手島くんがその後も、たくさんの曲のアイディアをどしどし持ってきてくれて。これはもう本格的に“作品=アルバム”を作るぞって心から気合が入りました。普段音楽を作る仕事の姿勢とはまったく異なる緊張感を持って、楽しくもあり、生みの苦しみとも闘いつつ完成させました。一見バラバラに見えていた収録曲も、アルバム全体でよく聴くとまとまりがあるように感じています。

――たしかに繋がりを感じるんです。am8が作品『iDoM』を通じて伝えたかったこと、コンセプト、キーワードなどありましたら教えてください。

手島:アルバムのタイトル『iDoM』は文字通りの“挑む”という意味を込めたのと、“i Do Music”の頭文字をもじっています。ずっとアートディレクションや映像をやってきた自分が、今度は音楽に挑戦するという。いかにも広告出身者的な発想ですね(苦笑)。伝えたかった事はそうですねぇ……やりたい事は臆せずにやっておこう、みたいな……あれ、なんか普通だな。うーんと……もとい、今の世の中って、大体何でも出来る便利な時代になってきたのに、肩書きとかで自分の可能性を制限しているかも知れない。そんな自己規制というか他己規制みたいなものを取っ払って挑戦する勇気みたいな事って大切ですね、という感じでしょうか。僕はやってみたけど、君はどうする?みたいな。その意味では挑戦状なのかも。

   

冨田:まずは、今の世の中のクリエイティブが、ツールやギアの進化によって、なんとなくオートメーションでモノが完成してしまうようなところに、そこはかとない違和感を感じていて。それを払拭すべく、手作りなところは細部までこだわり、完成までに何度も何度も“挑んで”いくプロジェクトを目指して、その過程のあり方自体を今にメッセージしたかった、というのはありました。あとは、アルバム制作の途中から生まれた感情なのですが、コロナ渦の影響で、みんなどこかしょぼくれている心を持っているご時世ではありますが、こんな僕らが作品を完成させて、ひとつの主張を発表する、ということで、それがみなさんの勇気になったいいなと思って仕上げました。

――伝わりますね。ちなみに今回、サウンドに自然音など様々なサウンドをミックスされた理由を教えてください。

手島:曲を作り出したのは去年の夏頃なのですが、今年になってやがて世界はコロナ禍となり大勢の方が命を落とすような事態が生まれて……。僕は政治的な発言は滅多にしませんけれど、そんな僕でもそういった状況に対し無反応でもいられない。でもこの状況を“怒る”とか“誹謗する”んじゃなくて、“弔う”と言いますか、聴いて頂く音で少しでも“癒し”とか“勇気”になるようなアプローチは無いのかな、と全体を設計していきました。で、その先にあるのはやはり海に行きたいなぁとか、川で遊びたいな、森でキャンプしたいなぁ、等々。あらめて自然の尊さを強烈に感じさせられたんです。ASMRまできっちりではないですが、そういった自然環境への憧憬をサウンドに取り入れています。“外出自粛“を逆手にテーマを考えた節はありますね。

冨田:自然音を取り入れたのは、手島くん発のアイディアです。一緒に楽曲プロデュースする立場としては、当初曲のラフミックスで自然音はかなり大きめになっていたのですが、仕上げのミックスの時点でバランスをとればいいかなと僕の考える自然音のバランスでミックスを聴いてもらったら「全然小さいよ!(怒)」って言われて(苦笑)。手島くんのラフイメージにあったレベルに戻してみたら、自分でも“ふむふむ、こういう意味でこのSEたちは存在しているんだ”、ということがよく理解できて、それぞれの楽曲の趣旨にもなっていることを知り、感心しましたね。

――今回、アルバム『iDoM』には、ゲストアーティストに夏木マリ、斉藤ノヴ、高浪慶太郎(元ピチカートファイヴ)、武田カオリ、XAI、ADD(ORESKABAND)など、豪華メンバーを迎えられています。なかでも、HANAさんの歌声がとても印象的でした。おふたりは、HANAさんの歌声のどんなところに魅力を感じられたのでしょうか? 

手島:割と早い段階でHANAさん以外のボーカルは既に決まっていたんですが、このままだと全体にちょっと大人なアルバムになり過ぎるかなと危惧して。たとえばちょっと若めの女の子とか誰か居ないかな……と探していたんです。ちょうそんな時、知人の先輩から「HANAちゃんって言う歌声が凄い子がいて、何か良い案件ないかしら?」とメールを頂いて。たしか深夜だったと思いますが、サンプル音源を聴いてビックリして。先輩のメールの趣旨は恐らく「CMで使えないかしら?」だったと思うんですが、あまりにもピッタリな歌声でしたので、無理を承知でアルバム参加のお話を打診しました。声の魅力としては“少女性、無垢、それが故の危うさ”でしょうか。すぐ壊れてしまいそうな声色なのに芯がある。その声と存在感に惹かれ、歌詞はHANAさんが決まった段階で彼女向けにリライトしました。

冨田:僕自身は別の軸でHANAちゃんというシンガーの存在を知っていて、ちょうど手島くんから提案を受けたHANAちゃんという方と一致したんです。とても驚きましたが、導きのようにも感じて。REC日に生の声を聴いたらものすごい透明感があり、かつ尖った部分も感じることができて。とてつもなく声の彩っぽさをもった方ですよね。

――今回、なぜアルバムをCDではなく12inchアナログ盤でのリリースという形式にされたのでしょうか?

手島:やりたい事はやり残さない精神ですね。かつて自分がデザインという仕事に就く、大学に入るなど生業のきっかけとなったのは紛れもなくレコードのアナログジャケットだったんです。その出発点を自分の手で作り上げる、これはいつか叶えたい夢でした。この時代の若者達にとっては珍しいプロダクトに映るであろうアナログ(レコード)ですが、彼らがこのアルバムに出会ったり、聴いたりする事で何か刺激的な電流を流せたら、僕らの役目は成功と言えるでしょう。

冨田:少し真面目な話になりますが、CDというフォーマットも、もはや時代とズレてきていることを実感していて、海外ではアナログマーケットがCDと逆転しているというニュースを聞いて、ああ、これは単純に「音楽を愛する人々の、音楽に対して真面目に投資する姿勢への、ひとつの回帰」だなあと感じていて、音楽ユーザーのみんなに、配信によるデジタルを便利に活用する音楽への出会い方の延長に、アナログ盤という実にフィジカルでナイーブな商品への誘導が実現したら、とても嬉しいなと考えていました。12inchサイズのジャケットを実際に手に取ると、その存在感に「おおー!」っていう、嬉しさみたいなものを感じるんですよね。

――am8のふたりが共通してリスペクトするアーティスト、ミュージシャンはどんな方ですか?

手島:一口に言ってしまえばYMOなのですが、う〜ん、なんかそれも普通ですよね……。YMOを核とした80年代のニューロマンティックカルチャーになるのかなあ。なので、単にテクノってワケだけではなくて、その時代を取り巻く思想だったり、アートだったり、音楽だったりファッションだったり。渾然一体チャンプルーな時代感が好きですね。勿論、デヴィッド・ボウイやハワード・ジョーンズやジャパンとか……。個別に名前挙げ出したらキリがないのですが、カルチャーやジャンルをはみ出すようなアーテイストは憧れます。その意味ではチリー・ゴンザレスは好き過ぎて、全然来日しないから、去年ドイツのケルン大聖堂までライブを観に行きました。日本人、僕以外誰も居なかったですね。

冨田:手島くんとは時代によっていろんなものを一緒に聴いて、吸収してきましたね。少し昔になりますが、YMOのメンバーがYMOの活動中〜1983年の散開以降でリリースしたソロアルバムがとても魅力的で。というのは、日本でスーパースターだったYMOのメンバーはそれぞれ、自分個人の感性で本格的に音楽と向き合って作っていた作品というのが、どれもストイックでアカデミックなものだったのに、日本のマーケットでもポピュラリティーを獲得していたんです。シンプルに売れる作品だった。これってすごいことだなあと今もあらためて実感しています。それらは今回の僕らの作品にも色濃く影響を与えてくれていますね。

――継承ということですね。必ずや次の世代へと繋がっていくことだと思います。今回、アートワークにHIRO SUGIYAMAさんが参加されています。作品作りにおいてどんなオーダー、やりとりなどありましたか?

手島:ヒロ杉山さんとは長い付き合いなんです。ここ5年くらいはヒロさん主催のグループ展でお世話になっていて、「そろそろ2人で何かやりたいね」と言う話をしていました。音楽とアート、全部を自作で完結する道もありましたが、今回は音楽に徹底するスタンスを決めていたので思い切ってお願いしてみました。ヒロさんの作品には様々なスタイルがありますが、中でもオーガニックなコラージュ作品が僕は好きで、今回のアルバムも自然憧憬を取り入れたコラージュサウンドなので「まずはサウンドを聴いて頂いて、あとは自由にお願いします」と、お願いしました。なかでも、二匹のクモザルの絵をとても気に入っています。余談ですが、10年ほど前に村上春樹氏の短編『夜のくもざる』や『品川猿』を映像化したいな、と思っていた時期がありまして。都会に潜むクモザルと女の話だったかな、そんな感じと今回のアルバムのイメージは偶然なのか、とてもシンクロしています。

   

――メンバーのおふたりは、今年の春から本格化したコロナ禍において日常に変化が起きたこと、人生観が変わったことなどありましたか?

手島:アルバムにサンプリングで取り入れた自然音については、やはり“外出自粛”や“ロックダウン”が世界中で起こるという事態に心が騒つくと言いますか。コロナそのものも勿論厄介な災いですが、コロナ陽性や濃厚接触といった事に対する人の関係性や誹謗中傷、衛生意識の誤差によって個々の人間性が露呈する状態が続くというのはとてもヤバいなと感じました。当たり前と思っていた事が、実は全然当たり前じゃないと感じますし、仕事や家族、個人、いろんな場面を尊いと思う気持ちは更に強くなりましたね。また、ネガティブなこんな時期に新しいクリエイションに挑戦出来たという事実は、すごく尊いクリエイティブアクションだったかも……と思っています。

冨田:コロナ渦以降の時代は“新しい思想、新しい価値観”というキーワードを掲げて、前向きに捉えています。たとえば音楽業界だけに目を向けてみても、かなりの打撃を受けている代わりに、オンラインでの表現自体はものすごいスピードで進化しているし、あたらしいスタンダードみたいなものが構築されていく様子を実感しています。あとは、このさなかで闘っている人々に共通すること、それは周りへの忖度に振り回されず、自分なりの取り組み方を決めて実行する決断をしている人がグイグイ前に進んでいるな、という場面に直面することが多くありました。しかし、風評によって、自分のことしか考えてない人々の言動などを見ると、心が痛みますね。

<am8『iDom』全曲セルフライナートーク>

A-1(1). Florian (ft. HANA + Kaori Takeda)

手島:武田カオリさんとHANAさんの掛け合いというなんとも贅沢な曲。独特な浮遊感が心地よい、と感じて頂けたら嬉しいです。この曲のミュージックビデオはロンドン在住の映像作家、尾角典子氏に制作して貰いました。独特な色使いのアニメーションも楽しめるので、楽曲同様ご覧頂けると嬉しいです。歌詞はクラフトワークのメンバーで今年逝去されたフローリアン・シュナイダー氏に捧げています。

冨田:大事な1曲目でもあり、楽曲のムードを大切にするために、最後まで何度も仕上げに時間をかけた曲です。特に、低音の処理は、たくさん出しすぎると全体の迫力が低下するし、少ないと物足りないし、と。しかしその成果あり、いい感じの場所に着地したかと思います。

A-2(2). Summer Lost (Instrumental)

手島:題名のままですが、今年は“サマーロスト”だったな、と。長年地中で過ごして今年産まれたセミ達は、この夏どんな気持ちで鳴いているのだろう……そんな事を考えながら弾いた短曲です。

冨田:手島くんは昔から、ピアノが中心になっている自分の好きな曲を僕に弾いて聴かせてくれることがよくありまして。その自ら演奏をするという感じがこのアルバムでも表現してほしいと思い「ピアノ曲作ってよ〜」と、お願いしたら、この曲をもってきてくれました。ミックスではピアノの音色に特に気を使いましたね。

A-3(3). Anywhere (ft. Kaori Takeda)

手島:今回最初に作ったのがこの曲でした。社会人になったばかりに訪れた夜の西麻布とか、当時聴いていたアシッドジャズの音感とかコード進行を今様にコラージュした感じです。武田さんのハーモニーが心地良さを増幅してくれました。何処となく、陰鬱な夜の東京って感じです。

冨田:ほとんどのトラックが打ち込みではなく、音の素材を配置して作られている曲です。手島くんの頭脳は、コラージュ=配置の構築によって、まさにデザインのような姿勢で作る才能に溢れているんだなあとあらためて感心しました。

A-4(4). gently (Instrumental)

手島:虫の鳴き声がリズムを刻み、鳥の声がソロを奏で、雨音や雷で終わる。アルバムの中でも特にこの曲は自然音が多いのが特徴です。途中の演説はチャップリンの映画『独裁者』の演説の一部です。内容は当時のドイツファシズムへの批判ですが、僕にはこのコロナ禍への風刺にも聞こえます。

冨田:ボッサのリズムで、可愛らしさのある曲ですね。しかし途中の引用しているナレーションの詳細をきいて、なかなかのメッセージソングなんだなあと受け止めつつ仕上げました。後半の自然音がめちゃ長めに入っていますが、これもメッセージと思って聴いてください。

B-1(5). Hatsukoi (ft. HANA)

手島:A面ラストの「gently」から繋がる森の音ではじまる、そんな設計にしています。HANAさんの歌声が、この曲に正体不明な感情を大いに降り注いでくれました。懐かしいような、触れてはいけないような、森の音楽です。聴いているとちょっと時空がわからなくなる、不思議な曲になりました。

冨田:長年音楽作りの仕事をしてきて、楽曲に突然パワーが漲っていくプロセスを何度か見たことがあるのですが、この曲もまたそんな場面に出くわすことができました。それは、努力とかたくさん時間かけたとかそういうことでなく、ちょっとしたことを入れ直したり、うたRECの時シンガーの方が素敵なテイクを生んでくれたりの積み重ねで急に訪れるんです。そういう時はミックスなどの仕上げ作業もなぜかスッとできてしまう。その観点でもチカラを帯びている曲ですね。

B-2(6). シティポップ ララバイ (ft. 高浪 慶太郎)

手島:この曲を作っている頃、志村けん氏が逝去されました。街を旅立ち、海を旅する男……そんな歌詞は志村さんに捧げています。曲調は明るいのに歌詞はセンチメンタルなバランスは、ピチカート・ファイヴの中でも特に大好きな曲、「カップルズ」から着想を得ています。高浪さんとご一緒できる日が来るとは……感慨深い一曲となりました。

冨田:手島くんが「この曲高浪さんに歌ってもらいたい〜」っていうので、(以前お仕事していたこともあり)ひさびさにコンタクトを取ったらご快諾いただきました。歌を歌うなんてだいぶ久しぶりと伺っていましたが、歌唱のトラックをいただき、その歌を聴いた時には、まぎれもなく僕らのあこがれ、大好きな高浪さん節で、熱狂しました。

B-3(7). 俗な女(feat. 夏木マリ)

手島:“僕が夏木マリに曲を作るとしたら?”と勝手に妄想して作った曲です。歌詞の主人公は“殺し屋の女”。でも1人の男を一途に想う女でもあります。なんというか、退廃の中にある可憐さ?って可愛いしカッコいいなと思うし、マリさんには、そんな世界観がとてもよく似合うと思ってます。ノヴさんのクールでディープなパーカッションもお聴き逃しなく。

冨田:レコーディングの時のエピソードですが、とにかく楽曲の雰囲気を瞬時にキャッチしてくれた夏木マリさん、ブースに入ってスタンバイし、テイクワンRECの時点で、もはや歌という枠に収まらない、そこには演技の迫力が存在し、一同感激の一言でした。斉藤ノヴさんのパーカッションも、楽曲を何回か聴いたら頭の中でどういうプレイであるべきかを瞬時に判断し、ほぼ一発で演奏〜REC終了の素早さを見せてもらい、つくづくスーパープレイヤーのスキルをまの当たりにさせてもらいました。

B-4(8). iDoM trailer ver. (ft. XAI)

   

手島:アルバムタイトルのこの曲は、元々「Hatsukoi」の仮歌を歌ってくれたXAIさんの声が素晴らしくて、急遽歌って頂きました。まだ予告編バージョンですが、完全版のリリースも予定しています。

冨田:実は手島くん、完成納期も近い段階で、当初インスト楽曲といっていた枠に、フルサイズヴァージョンのこの曲のデモ音源を持ってきて。仕上げまでの作業を考えると、このデモから完成に向かうにはあまりに時間がなく、他曲の仕上げ作業も立て込んでいたので、僕からの提案で「フルサイズとてもいいと思うけど、アルバムには予告篇のようなショートサイズで収録しませんか?」という話にまとまり、このような収録形態になりました。XAIさんのボーカル力も素晴らしいので、それも今後のフルサイズを楽しみにしてもらおうという手筈になっています。

am8 / photo by am8
am8 / photo by am8

am8 Official Twitter : https://twitter.com/am8__official

am8 Official Instagram:https://www.instagram.com/am8_official2020/?hl=ja

am8 Official YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCQO1aT-1c0mj0HPyWFJh5Lw/featured

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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