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【ソニー×Spotify】ハイレゾ有料配信を導入して欲しい妄想。

ふくりゅう音楽コンシェルジュ

ソニーがSpotifyと提携する。自社でスタートした音楽ストリーミング・サービスMusic Unlimitedを3月29日に終了して、新サービスPlayStation Musicへ移行すると発表したのだ。ストリーミング音楽サービスの大手 Spotify と提携したことで、定額または広告つき無料の聴き放題サービスを4月より世界41か国で順次提供をスタートするという。

PlayStation Musicは、スウェーデンの音楽配信サービスSpotifyとの提携によるもの

出典:ITmedia ニュース

残念ながら現在日本は提供予定の41か国には含まれていないが、CD市場が残る特殊な日本マーケットだからこそ提案したい“妄想”がある。

それは、PlayStation Musicでのハイレゾ音源データの追加有料販売だ。

いわゆる、Spotifyの音楽ストリーミング・サービスを楽しんでいるリスナーへ向けて、ソニーが提唱するハイレゾによる高音質楽曲データの有料販売ボタンをPlayStation Musicに付けて欲しいと思ったのだ。使い勝手の良い音楽ストリーミング・サービスで自分好みの音楽に出会えたら、より高音質な有料音源との出会いの場もあったら最高だと思う。

Spotifyのようにフリーミアムによる音楽ストリーミング・サービスの普及を“健全”に進めるためには、コンテンツ・ビジネスとして収益性を保つために、高音質楽曲データの有料販売の可能性を同時に考えるべきだ。

ソニーは昨今、ウォークマンを筆頭にハイレゾ・オーディオ分野で大きな改革をすすめている。ハイレゾの定義とはCDの3倍以上に高解像度な音源データのことを指すという。ソニーは現状、楽曲データ販売を日本では配信ストアmoraで行っている。moraではより高音質なDSD配信もスタートしている。しかし、moraのような旧来型の使い勝手である販売サイトからは、いかんせん楽曲の購入方法がiTunesに比べ難しい。新たな楽曲との出会いのチャンスを提供するおもてなし感に欠けていることが、一般的な普及の妨げになっている一面は否めないだろう。しかし、こういった課題はSpotifyと連携したPlayStation Musicであれば解決出来るのかもしれない。

音楽の聴き方を革新しつづけてきた

ソニーが提供するかつてない音楽体験

出典:ハイレゾリューション・オーディオサイト

もちろん「ハイレゾとMP3データとの違いなんて“たいして”感じられないんじゃない?」なんて、声も聴こえてくるだろう。しかし、それは間違いだ。もちろんハイレゾ音源だから音がずばぬけて良いというわけでもなく、視聴環境、いわゆるヘッドフォンやスピーカー、アンプの存在が重要だったりする。それに楽曲のマスタリングも重要だ。良い音で聴くということはレコーディング時のごまかしが利かないということでもある。しかし、誤解を恐れずにいえばヘッドフォンやポータブルアンプが優秀であれば、たとえ圧縮MP3音源であっても十分に音の良さを感じられる場合もある。しかし、オーディオの世界は深い。音が良くなると言われるケーブル1本が数万円の世界だ……。興味を持ったところで、どんな機種を購入し、組み合わせるべきか悩んでしまうのが一般的な音楽リスナーの正直な気持ちだろう。

ソニーが素晴らしいのは、ハイレゾ文化を広げる為にここ数年で、ヘッドフォンやポータブルアンプ、コンポーネントオーディオ、ケーブルなど、一般リスナーにも興味を与え、分かりやすい商品を揃えてきたことにある。

→ソニー:はじめてのハイレゾ

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<ハイレゾを楽しむオススメ例:iPhoneよりすごいコース>

デジタルオーディオプレーヤー(ウォークマン):NW-A16【¥23,544】

インナーイヤーレシーバー:XBA-A2【¥23,760】

<筆者オススメ例:別世界体験コース>

デジタルオーディオプレーヤー(ウォークマン):NW-A16【¥23,544】

ステレオヘッドホン:MDR-Z7【¥50,970】

ポータブルヘッドホンアンプ:PHA-3【¥88,400】

<超ハイスペックでハイレゾを楽しむオススメ例:異次元体験コース>

デジタルオーディオプレーヤー(ウォークマン):NW-ZX2【¥129,470】

ステレオヘッドホン:MDR-Z7【¥50,970】

ポータブルヘッドホンアンプ:PHA-3【¥88,400】

ヘッドホンケーブル:MUC-B20BL1【¥22,910】

※金額はAmazon価格を参考に。

iPhoneなどスマホの“付属音楽プレイヤー機能”として音楽視聴環境を、誰もが手軽に入手できるようになったいま、「高い!」そんな声も聴こえてくるかもしれない。しかし、iPhoneを筆頭に“付属音楽プレイヤー機能”には落ち度がある。音をしっかりと鳴らすアンプ機能が弱いのだ。いわゆる、スマホとしてコストダウンを計った結果、削られたのが音質機能なのは明白だ。

PHA-3など、ポータブルヘッドホンアンプの威力は凄まじい。左右独立した2本ずつの端子で繋ぐ“バランス接続”も効果あり。激的に奥行き、余韻、分離感が変わるのだ。まさに、アーティストがレコーディング時に意図していた音が自分の手元で鳴る嬉しさ。音楽ファンにとって変えがたい喜びだ。

たとえば普段iPhoneで十分に音楽を楽しんでいる「ハイレゾなんて興味が無いよ!」という友人に、筆者オススメ・スペックな環境で聴かせてみると100%の確立で、音の素晴らしさ、楽器の分離感、奥行きある音の広がりに感動される。ハイレゾ環境未体験な音楽リスナーは、既にハイレゾ環境を持っている友人を探すか、ショップなどで体験してみて欲しい。

高額ではあるが、38歳の筆者は、小中学生の頃にお年玉をためて10数万円のケンウッドのコンポを購入していたことを思い出した。音楽リスニングの世界において、別世界を体験させてくれるという選択肢が“ティーンエイジャーにもわかりやすく”提示できることは良いことだと思う。

これもまた音楽の楽しみ方のひとつなのだ。

昨今、40代以上が反応していると言われるハイレゾ関連アイテムだが、たとえば自宅にハイレゾ環境があることで、子供世代がぶっとんだ良い音に触れる機会を提供できることは、二次的影響として大事だと思う。もちろんYouTubeで無料で聴き放題な時代に、10代がいきなりメインターゲットにはならないだろう。しかし、選択肢を広げ、ゆっくりと環境を育てていくことも大事だと思うだ。

無料メディアと有料メディア、そしてその中間のフリーミアムなメディア。その共存のバランスが業界をアーティストをリスナーを健全な方向にすすめていくことだろう。

最後に、ハイレゾ環境で評判が高い楽曲を記しておこう。iTunesやiPhoneで生み出された“手軽な”楽曲試聴環境が生み出した“手軽な”試聴スタイルとは異なり、1曲1曲を味わうかのように楽しめる音楽ライフ・スタイルの在り方。どちらが良いという問題ではないが、一日の疲れを癒すリラクゼーションなご褒美として、1曲の音楽を選びゆったりと向き合う楽しさは格別な時間だ。

<音の違いを楽しめるオススメのハイレゾ楽曲>

Michael Jackson「Smooth Criminal」

→ イントロSEからの緊張感ある映画的展開がたまらない!

Marlena Shaw「フィール・ライク・メイキン・ラヴ」

→ ライブ音源は本物のような臨場感ある体験を与えてくれる!

Aerosmith「Eat The Rich」

→ ロックのダイナミズムを感じられる力強き爽快感!

Daft Punk「Give Life Back to Music feat. Nile Rodgers」

→ まるで手元でナイル・ロジャーズがギターを奏でてくれるかのような!

TM NETWORK「[QUIT30]Loop Of The Life」

→ イントロの生き物のようなデジタル音の響き!

※moraで購入しました。

とはいえ、ハイレゾ環境を整えたところで、どんな楽曲が自分好みなのか? 必ずやそんな問題にぶちあたることだろう。そこで、Spotifyの使い勝手の良さを活用したハイレゾ音源と出会える仕組みがPlayStation Musicで実現すれば、楽曲を探したり、友人からの楽曲プレイリストのシェアが回ってくるなど、有料のハイレゾ音源の購入へとつながることに期待をしたい。音楽を手軽に出会いやすくしてくれるフリーミアムで楽しめる時代に、ハイスペックな音楽プレイヤーで有料の高音質データをご褒美感覚で購入して一日の疲れを音楽で癒す。そんなライフスタイルもなかなか悪くないものだ。

フリーミアムによって手軽に聴き放題となった音楽と、機能も価格もハイスペック化していく音楽。相反する音楽の楽しみ方。その両者のバランスがあってこそ、楽曲を生み出すアーティストはバランスを保てるのではなかろうか?

音楽は大衆文化であるとともに、アーティストが創造したアート作品である。音楽ストリーミング・サービスやハイレゾ音源は、そんな音楽文化の復権であり、楽しみ方の再構築なのだと思う。残された課題は、両者をミックスしたインフラの整備と、ワクワク出来る楽しみ方の提供なのかもしれない。

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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