ブラック企業と言われないために企業が気を付けるべきこと-弁護士が解説

(写真:アフロ)

昨年頃からブラック企業への様々な批判が展開されています。

中には少々加熱し過ぎと思われることもありますが、ブラックな労働環境を減らすために、労働者側からブラック企業を叩くことは、社会の膿を取り除くために一定程度必要な表現活動なのだろうと思います。

他方、本稿では、ブラックな労働環境を減らすための別のアプローチとして、企業側にとってブラック企業と呼ばれるリスクと、その改善方法について解説してみます。

すなわち、ブラックな労働環境を減らすということは、労働者側にとってだけではなく、企業にとってもメリットがあり、社会全体として目指すべきものだということを理解していく必要があると思います。

ブラック企業と呼ばれるリスクについて

企業側としては、ブラック企業と評価を受けることについては、大きなリスクがあります。

第一に、当然ながら、労働者から損害賠償請求や未払残業代請求を受けたり、行政からの指導や処分を受けたりするという法律上のリスクがあります。

さらにそれだけではなく、以下のような事実上のリスクにもさらされます。

まずは、レピュテーションリスクとして、ブラック企業の商品やサービスのイメージが悪くなり、一般消費者から商品やサービスを買わない利用しないという「不買運動」が起きてしまうことが考えられます。

そのため、ブラック企業と評価されることが、企業の業績や販売実績にも影響を与えてしまいます。

また、就職活動を行う学生などの間では、就職先がブラック企業の可能性があるかどうかという点が大きな関心事となっており、ブラック企業という評価がされてしまうと、優秀な人材を確保することが難しくなり、中長期的に企業の衰退を招いてしまいます。

しかも、このようなブラック企業という悪評については、内部や外部の匿名の個人発信であっても、短期的に爆発的に広まってしまうことがあることに注意が必要です。

ブラック企業という評価を受けないために

以上のようなリスクを回避するために、具体的には以下のような対策を講じていくことが重要です。

1.入社時の労働条件の明示と雇用契約書の作成

ブラック企業という評価については、主観的評価を伴うものですが、労働者と企業側とで、就職前の想定と実際の労働環境や仕事内容へのズレが大きければ、それだけ主観的にブラック企業と感じる度合いも大きくなりますので、入社時にきちんと労働条件を明示した上で書面を作成しておくことが大切です。

2.従業員の労働時間の適切な管理と残業代などの支払い

労働時間の管理は、労働者を過酷な労働環境に陥らせないために重要です。

そして、労働時間管理を適正に行い、法定の残業代などをきちんと支払い、事後的に多額の未払金請求を受けることのないような体制を維持する必要があります。

特に労働時間の管理については、ガイドラインにより、タイムカードの利用などをするように規定されています。

3.セクハラ・パワハラなどの予防・対応の適正化

管理職を含む従業員に対して、セクハラやパワハラに関する適切な教育を実施し、これらの問題発生を予防し、もし発生してしまった場合には早期に適切に対応できる体制を維持することが重要です。

セクハラについては、男女雇用機会均等法及び厚労省のガイドラインにより、セクハラ禁止の方針の明確化と周知徹底、適切な相談体制の整備、問題発生時の早期適切な対応などが企業の法的義務として定められています。

パワハラについては、従業員に対する適切な指導や教育との線引きは必ずしも明確ではありませんが、定期的に従業員からのアンケートや多面評価を実施することで、潜在的にパワハラに苦しむ従業員がいないかをチェックしていく必要があります。

4.従業員の労働安全衛生

従業員の労働安全衛生、特にメンタルヘルスケアについて、従業員の異変を見逃さないように、産業医による定期的な面談を設けたり、弁護士に相談できる窓口を設けたりすることが重要です。

このような労働環境の整備に加えて、業務上の過大なノルマを課さないように相互チェックをする、適正な人事評価を行い過剰な長時間労働が評価されない仕組みを作ったりして、従業員には「使い捨て」にされるという不安を感じずに仕事に対してやりがいを持てる環境を整えていくことがとても大切です。

以上、これまでも散々言われ続けていることではありますが、これだけブラック労働をなくそうという世論が高まっている今こそ、もう一度社内の労働環境を見直すべき時なのだと思います。

※本事は分かりやすさを優先しているため、法律的な厳密さを欠いている部分があります。また、法律家により多少の意見の相違はあり得ます。