武術・格闘技版オリンピックで日本勢がメダルを量産したのは意外なあの競技

今大会から正式種目となったサバットで日本は5つのメダルを獲得(C)JSC

【武術・格闘技版オリンピックとは?】

8月30日から9月6日まで8日間に渡り、韓国・忠州市で『世界マーシャルアーツ大会(World Martial Arts Masterships 2019)』が開催され、“足技のボクシング”とも言われるサバットの日本代表チームが5個のメダルを獲得した。

 世界マーシャルアーツ大会は、国際オリンピック委員会(IOC) の承認組織「国際スポーツ連盟機構(GAISF)」が後援する世界で唯一の武術・格闘技競技大会。“Beyond the Times, Bridge the World(時代を超えて、世界をつなぐ)”をスローガンに2016年、第1回大会が韓国・清州で開催され、約1200名の選手たちが17競技で覇を競った。

 3年ぶり2回目の開催となった今回は、106ヵ国・地域から3119名(選手2414名、役員705名)が参加と規模を拡大。競技種目も17から20に増えたのだが、そのラインナップはとても興味深い。

 柔道、テコンドー、合気道、柔術、ムエタイなど日本でも比較的耳慣れた競技から、韓国相撲とも言われる「シルム」、マレーシアなど東南アジアの伝統武術である「シラット」、柔道に似たウズベキスタンの国技「クラッシュ」、流鏑馬(やぶさめ)の競技版のような「騎射」などなど、アジアをメーンとした世界の格闘技が一堂に会しており、まさに“武術・格闘技版オリンピック”といったところだ。

【国内競技人口は数十名ながら世界で躍進】

 

硬い靴とロングスパッツを着用し足技を駆使するサバット競技(2016年5月、国内での交流大会より。撮影:藤村幸代)
硬い靴とロングスパッツを着用し足技を駆使するサバット競技(2016年5月、国内での交流大会より。撮影:藤村幸代)

 今大会から正式種目となったサバットは、「ボックス・フランセーズ(フランス式ボクシング)」という正式名称が表すようにフランツをルーツとし、特にヨーロッパで人気の高い格闘技。試合はキックボクシングと同じくパンチや蹴りが中心だが、硬い靴を着用することや、華麗な足技が飛び交うことが特徴だ。

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 日本では都内にあるジャパン・サバット・クラブなど練習場所が限られていることもあり、競技人口は数十名と少ない。それでも、2009年にアジア人初の世界チャンピオンとなった原万里子さんを始め、世界選手権メダリストを継続して輩出している。

 そんな“少数精鋭”の日本代表チームが今回、過去最高ともいえる結果を残した。現・世界ランキング1位の選手や、昨年の世界選手権銀メダリストもエントリーする中、銀メダル2、銅メダル3を獲得。参加した6名中5名がメダリストとなり、残る1名も5位入賞を果たしたのだ。ちなみに、今大会の日本勢のメダル獲得数は以下の通り。サバットは金メダルこそ逃したが、メダル獲得数では日本勢で最多だった。

・柔道(形がメイン)=金3

・クラッシュ=金1、銅1

・サバット=銀2、銅3

・龍武道=銀1、銅2

・統一武道=銀1、銅2

・カバディ=銅1

【メガスポーツイベントやメジャースポーツでなくても】

今大会のメダリストたち。大写真=左より梅田、原、平子、写真上=窪田、写真下=高橋の各選手(C)JSC
今大会のメダリストたち。大写真=左より梅田、原、平子、写真上=窪田、写真下=高橋の各選手(C)JSC

 決勝でフランスの新星に敗れたものの、女子52Kg以下級で銀メダルを獲得した前出の原さんは「決勝で完敗したことでサバット道を追い求めたい気持ちがより一層深まりました」と語り、女子56Kg以下級で同じく銀メダリストとなった競技歴10年の梅田ルミさんは「仕事場と家族と周りの皆さんの協力があって競技を続けられています」と、改めて周囲への感謝を口にした。

 男子65Kg以下級で銅メダルの高橋圭介さん、女子52Kg以下級で銅メダルの平子幸恵さんは共に公式の国際大会で初のメダル獲得を果たしたが、「世界との現実の実力差、アジアのレベルアップのスピードを共に強く感じた大会でした」(高橋さん)「世界のトップレベルの選手と試合ができ勉強になりました」(平子さん)と謙虚に語りつつ、“対世界”に新たな闘志を燃やしている。

 日本代表チームを率い、自身も男子60Kg以下級で銅メダルを獲得したジャパン・サバット・クラブ代表の窪田隆一さんは「隣国の韓国で行われた世界で唯一の国際武術大会という場で、アジアではあまり知られていないサバットという競技の魅力をお伝えする機会をいただけたことが嬉しい」

 開催まで1年を切った東京オリンピックや、いよいよ明日開幕するラグビーワールドカップなど、メガスポーツイベントももちろん、わくわくするけれど、自身が「これしかない」と決めたスポーツに真摯に取り組み、志高く世界に挑み、私達に代わって世界の国の人々と交流を深めてくれる、そんな彼らの活躍はメジャー、マイナーの別なくわくわくと嬉しいし、誇らしい。