Yahoo!ニュース

“キック”はエクササイズだけじゃない!

藤村幸代フリーライター
弱冠20歳、MIOのキックが相手のアゴ元を狙う (C)SB Fumiko.I

競技としての女子キックボクシング

ハリウッド女優や国内の人気モデルらが体形維持に採り入れ、注目を集めるキックボクシング。エクササイズとしては浸透してきたが、競技としての女子キックの知名度は、まだまだ高いとはいえない現状だ。

国内で、女子選手だけの立ち技格闘技イベントを定期開催しているのは現在2団体。ひとつは2007年から1~2ヵ月に一度の開催を続ける『J-GIRLS(ジェイガールズ)』、もうひとつは今年、創設30周年を迎えるシュートボクシング(SB)で、2009年から年に一度、海外の強豪ファイターも招へいするビッグマッチを開催している。

5月24日、東京・新宿FACEで開催された『女祭り 2015 ~J-GIRLS×SHOOT BOXING~』

は、女子立ち技格闘技のアピールと、良質なマッチメークを目指し、この2団体がタッグを組む形で行われた。

蹴りとパンチのキックルールはもちろん、投げ技や立った状態での関節技も有効のSBルールあり、2団体の対抗戦もありと、短時間に女子立ち技の魅力を詰め込んだ今大会。そのなかで印象に残ったのは、新世代ファイターの躍進だった。

台湾の実力派に右強打を放つMIO(右) (C)SB Fumiko.I
台湾の実力派に右強打を放つMIO(右) (C)SB Fumiko.I

女子キックに新世代の波が

大会最終試合では、SBの新世代エースMIO(みお)が、2013年台湾ボクシング大学選手権金メダリストのキル・ビー(台湾)を強烈なボディ打ちで攻め立て快勝した。両者ともに弱冠20歳。この試合と共に“ダブルメインイベント”と冠された一戦では、J-GIRLS王者の紅絹(もみ/30歳)をUnion朱里(ゆにおん・あかり/21歳)が延長で振り切り、J-GIRLS×SB対抗戦を制した。

また、入場時にはキレ味鋭いシャドーボクシングだけで場内を沸かせ、試合でもノンストップで打ち、蹴りまくった“スーパー女子高生”山口友花里、多彩な蹴り技で国内女子格闘家最長身(178cm)の和乃(わの/26歳)を翻弄した法・DATE(のり・でいと)は揃って16歳だ。

J-GIRLSでは、早くからプロの前段階としてセミプロルールを設け、「最強女子中学生決定トーナメント」を行うなどロー&ミドルティーンに試合の機会を提供してきた。また、シュートボクシングも「JKS48トーナメント」と題し、女子高生限定のワンデートーナメントを実施している。

競技人口の多い空手(世界の女子空手家人口は5000万人との説も)に幼い頃から取り組んできた少女たちにとって、キックやシュートボクシングは移行しやすい競技分野であることもそうだが、団体の地道な人材発掘・育成の努力も、新世代ファイターが活躍する理由のひとつだろう。

テクニック、スタミナで沸かせた山口(左)(C)SB Fumiko.I
テクニック、スタミナで沸かせた山口(左)(C)SB Fumiko.I

8月21日、女たちの“ひたむき”が爆発する

シュートボクシングでは30周年記念イベントとして、8月21日、4000人収容の東京・大田区体育館で女子立ち技格闘技の祭典『Girls S-cup』の開催を決定、8人参加の48Kg級日本トーナメントを行うことをすでに発表している。

48Kgといえば前出のMIO、Union朱里、山口の階級だ。しのぎを削る新世代に、今回苦杯をなめた紅絹らベテラン勢が食い込んでいけば、女子トーナメント史上屈指の攻防が展開されるだろう。

大会目前の7月には、気鋭の女子キックボクサーたちを追ったルポルタージュも出版されるなど、徐々に追い風が吹きつつある女子キックボクシング。“ひたむき”という若さ特有の財産を惜しげもなく出し尽くす、新世代の激闘を含め、競技としての女子キックの見どころは多い。

「J-GIRLS」5/24大会出場選手が勢ぞろい(C) SB Fumiko.I
「J-GIRLS」5/24大会出場選手が勢ぞろい(C) SB Fumiko.I

【試合結果】

■J-NETWORK『女祭り 2015 ~J-GIRLS×SHOOT BOXING~』

2015年5月24日(日)東京・新宿FACE

【第1試合】J-GIRLSルール/48kg契約/2分3R

○後藤まき(RIKIX)vsルミコ(BLITZ GYM)×

判定3-0(30-27,30-27,30-28)

【第2試合】J-GIRLSルール/J-GIRLS×SB対抗戦/48kg契約/2分3R

環(Dropout)vsユリカ.グラップリングシュートボクサーズジム(SB・グラップリングシュートボクサーズ)

※ユリカが負傷のため欠場、試合中止 

【第3試合】J-GIRLSルール/ピン級/2分3R

○松下えみ(T-KIX GYM)vs実証 DATE(Team DATE)×

判定3-0(30-27,30-27,30-27)

【第4試合】SBルール/J-GIRLS×SB対抗戦/スターティングクラスルール/54kg契約/2分3R延長1R

○丸山絵利香(湘南格闘クラブ)vsボーウィー・オカダ(SB・シーザージム)

判定3-0(30-27,30-27,30-27)

【第5試合】J-GIRLSバンタム級次期王者挑戦者決定トーナメント一回戦/サバイバルマッチ1

○法 DATE(Team DATE)vs和乃(NJKF・新興ムエタイ)

判定3-0(30-29,30-27,30-27)

※法 DATEがトーナメント勝ち上がり

【第6試合】J-GIRLSミニフライ級次期王者挑戦者決定トーナメント一回戦/サバイバルマッチ1

○山口友花里(空手道 白心会)vs未知(SB・志真會館)×

判定3-0(30-27,30-27,30-27)

※山口友花里が決勝進出

【第7試合・ダブルメインイベント】SBルール/ J-GIRLS×SB対抗戦/エキスパートクラス特別ルール/48kg契約/3分3R無制限延長R

×紅絹(NEXT LEVEL渋谷)vs Union朱里(SB・グラップリングシュートボクサーズ)○

判定1-0(29-29,30-29,29-29)延長0-3(9-10,9-10,9-10)

【第8試合・ダブルメインイベント】SBルール/エキスパートクラス特別ルール/48kg契約/3分3R無制限延長R

○MIO(SB・及川道場)vsキル・ビー(台湾/Iron Boxing Gym)

判定3-0(30-28,30-28,30-28)

◆J-GIRLS オフィシャルサイト

http://jg-kickboxing.jp/

◆シュートボクシング オフィシャルサイト

http://shootboxing.org/new/

フリーライター

神奈川ニュース映画協会、サムライTV、映像制作会社でディレクターを務め、2002年よりフリーライターに。格闘技、スポーツ、フィットネス、生き方などを取材・執筆。【著書】『ママダス!闘う娘と語る母』(情報センター出版局)、【構成】『私は居場所を見つけたい~ファイティングウーマン ライカの挑戦~』(新潮社)『負けないで!』(創出版)『走れ!助産師ボクサー』(NTT出版)『Smile!田中理恵自伝』『光と影 誰も知らない本当の武尊』『下剋上トレーナー』(以上、ベースボール・マガジン社)『へやトレ』(主婦の友社)他。横須賀市出身、三浦市在住。

藤村幸代の最近の記事