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日本の素晴らしいヒトやモノを伝えていくために、中田英寿の“旅”は続く

浅野祐介OneNews編集長
「加賀棒ほうじ茶」のリニューアル会見で語り合う中田英寿氏(左)と前園真聖氏(右)

2009年からスタートした日本全国47都道府県をめぐる旅。その旅の中で自身が直接触れてきた日本の文化・伝統・農業・ものづくり、その魅力をより多くの人に知ってもらうこと、それが中田英寿さんの目的だという。

この4月には、土曜朝の情報番組『土曜はナニする!?』にて、新企画「にほんもの学校」がスタート。さまざまな方法で、“日本の素晴らしいヒトやモノ”を伝える活動を続ける中田さんに、その想いを聞いた。

――『にほんもの』は、2020年9月15日にEC機能(『にほんものストア』)を実装。ストアを導入して、1年半ほどがたちましたが、ここまでの手応えを教えてください。また、逆に課題として見えてきたことなどあれば教えてください。

【中田英寿】僕がやりたいことは、日本の素晴らしいヒトやモノを伝えていくこと。これを命題にずっと取り組むなかで、伝え方もいろいろな形があるのではないかと考えました。それまでの『にほんもの』は、自分が回ったところをWebで発信するという、いわゆるメディア機能だけでしたが、(ECで購入してもらうことで)実際に体験してもらうことも伝え方だと思います。他の伝え方としてはラジオもやっていますし、これからTVもやっていく予定です(※この取材は番組放送前に実施)。すべては「伝え方」ですよね。なので、ECも「ただモノを売っている」という考えはなくて、体験を通してどのように伝えるか、ということ。伝え方って本当にたくさんあるので、伝え方、見せ方によって刺さる年代も性別も違ってくる。伝えるって簡単じゃないなと、やればやるほど感じますね。伝え方を日々、いろいろと工夫しながらやっています。

【中田英寿】同時に、一つひとつ丁寧に、真摯に情報を伝えることを考えながらやっていることで、自分が旅で訪れる際の生産者からの受け入れられ方もどんどんよくなっていると感じますし、「こういうことを届けてほしい」といった話をもらう機会も増えました。

――今後の展開として考えていることは?

【中田英寿】次のステップとしては、今回の「加賀棒ほうじ茶」の監修のように、生産者が造ったものをそのままというだけではなく、コラボレーションであったり、新しい商品開発など自分ならではのエッセンスを加えた発信にもより挑戦していきたいと思っています。(にほんものでスイーツマスターを担当する)ゾノ(前園真聖)もそうですし、さまざまなシェフやマスターなどいろいろな知識を持っていて新しいものを生み出すことに長けた人を僕はたくさん知っているので、そういう人たちと、素晴らしいモノをつくり出せるけど、加工品などはあまり得意ではないという生産者たちを結びつけて進めていきたいと考えています。

――人と人をつなげる、中田さんならではの役割ですね。

【中田英寿】シェフの方と話をすると、もちろん彼らにはおいしいものをつくる能力があるのですが、いいモノを探しに全国を旅する時間がなかったりします。でも、“モノづくりの監修”はできる。一方で、素晴らしいモノをつくる生産者の方の課題としては、傷が付いたり形が規格外だったりして販売できないもの、売り切れないものが存在します。そうした人たちをつなげることで、お互いがWin-Winになる形をつくれるのではないかと思います。それはずっと考えていたことなので、具体的に進めていきたいと思っています。

――中田さんの視点、エッセンスを加えていくこと。『にほんもの』はさらに進化を遂げているんだなと改めて感じました。

【中田英寿】これまでは現場を勉強すること、学ぶことに重きを置いていました。もちろんその姿勢は変わりませんが、同時に、現場での問題点や課題にもより目を向けることで、生産者のためになることをより進めていきたいと持っています。それが結果、消費者のためにもなり、より多くの人がハッピーになれるのではないかと考えて取り組んでいます。

――生産者の方、作り手への伝え方で大切にしていることはありますか?

【中田英寿】重要なのは、彼らがどういう想いでつくっているのか、その想いとこれまでの背景をちゃんと知ること。それをしっかりと理解したうえで、今という時代に、本来はどういう形であるべきかについての提案を丁寧にすることが大切だと考えています。もちろんそれは、これまでやってきたことを否定することでもない。想いや背景をきちんと理解したうえで、それを生かしてどのように現代により合わせていくかを提案しています。たとえば今回の「加賀棒ほうじ茶」も味がゼロから変わるわけではなくて、今までのものを生かしながら、どのようにより現代の生活に合わせていくのか、その部分を提案しました。

【中田英寿】多くの人は「お茶=お湯で淹れるもの」という印象を持っています。一方で、若い世代では急須を持っていない人も多くいます。コンビニでは冷たい飲み物が多くのスペースを取り、冷たいお茶のペットボトルの消費量も非常に多い。年代が上になるほどお茶は「茶葉で淹れて飲む」という傾向も高くなりますが、それでも割合はどんどん減っています。では、どうやったら「茶葉で淹れるお茶」を今の時代に合わせておいしく飲んでもらえるのか。僕がやっているのは、その在り方を提案していくこと。例えば、水出しに特化した茶葉にしたり、食事中に合うように味を設計したり・・。作り手の方は長くやっている方が多いので、新しい提案に、最初は驚くこともありますが、きちんと意味を伝えると理解してくれます。個人の好みで話すわけではなく、意味で話をすることが重要だと思っています。

「ゾノ」「ヒデ」と呼び合う仲、『にほんもの』のスイーツマスターを担当する前園真聖さんにも話を聞いた。

――中田さんの活動について前園さんはどう見ていますか?

【前園真聖】(ヒデは)若くして海外に出たキャリアもあって、海外については昔からかなりの知識を持っています。逆に、海外に比べると日本については知らないことが多いという考えのもと、伝統工芸や日本酒から日本各地の旅が始まって、現地に足を運び、自分で実際に体験して、その魅力を伝えていく活動を続けています。自分の足で全国を回る姿には本当に頭が下がりますね。先日、四国を一緒に旅させてもらったときも、もう5年くらい四国を回らせてもらっている僕よりも詳しかった。逆に教えてもらうことが多かったです。

【前園真聖】自分が興味を持ったことには一切の妥協をしない。ブレずに追求し続ける姿勢は、現役時代のサッカーに対する姿勢と一緒で、それが今は、日本のいいものをみなさんに知ってもらう、世界に知ってもらうことに向いていることをあらためて感じます。

――スイーツマスターとしての活動について、今後の意気込みを教えてください。

【前園真聖】プライベートで話すときも、例えば僕が「このお店のこれがおいしかった」と伝えると、ヒデはそれこそ次の日にはそのお店に行っていたりします。逆に僕は、教えてもらってもなかなか行けずに怒られたりしていますね(苦笑)。気になったものはすぐに自分で試す、あの行動力は見習わないといけないですし、常にアンテナを張りながら、おいしいスイーツを、よりたくさんの方に知ってもらえるようにしていきたいなと思います。

中田英寿の“日本の素晴らしいヒトやモノを伝えていく”旅に、これからも注目していきたい。

OneNews編集長

編集者/KKベストセラーズで『Street JACK』などファッション誌の編集者として活動し、その後、株式会社フロムワンで雑誌『ワールドサッカーキング』、Webメディア『サッカーキング』 編集長を務めた。現在は株式会社KADOKAWAに所属。『ウォーカープラス』編集長を卒業後、動画の領域でウォーカー、レタスクラブ、ザテレビジョン、ダ・ヴィンチを担当。2022年3月に無料のプレスリリース配信サービス「PressWalker」をスタートし、同年9月、「OneNews」創刊編集長に就任。

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