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シングルマザーや低所得世帯の住宅問題に朗報 ビレッジハウス見学記

赤石千衣子しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長 
福岡市香椎浜にあるビレッジハウス

突然の連絡

米国不動産投資会社フォートレス・インベストメント・グループという聞き慣れない会社の方から、連絡を受け、雇用促進住宅を西日本地域に600棟買い上げ、貸出しを始めているから、紹介したいという連絡を4月に受けた。よくわからなかったが話を聞く事にした。

今まで雇用促進住宅は、なかなか入居できないのに、空室が多いと聞いていたが何が起こっているのだろう?

話を聴くと、なんとその会社が、西日本地域の雇用促進住宅を一括買い上げ、その個数は6万戸もありリノベーションして貸し出しを始めているという。

それは見学してみる価値がある、見学しないと判断できない、そう思って、私は4月に関西地域、そして5月に福岡市内に見学に出かけた。

現在、このグループは、3万5000戸の貸し出しを始めている。名付けて、ビレッジ・ハウスというのだ。

低家賃の住宅、交通の便はいろいろ

まず、兵庫県伊丹市の2Kの団地を訪れた。

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伊丹駅からバスで15分、さらに歩いて6分という住宅地域にある団地である。交通の便はあまりよくない。

2Kの部屋は、入ってすぐ台所があり、4畳半の部屋と南側に6畳の部屋があり、29平米の作りである。家賃は3万5000円と低価格だ。リノベーションしていない畳だけの部屋は昭和の雰囲気だが、なんと言っても、低価格の家賃が魅力だろう。

続いて、同じ団地のフローリングなどリノベーションした2Kの部屋も見た。こちらは、ソファが置かれ、ふすまもクロスが貼られて、モダンな雰囲気が漂う。年齢の子供の居るシングルマザーや、単身者に向いていると言う印象だった。

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隣の宝塚市の団地へ。こちらは、市営団地も隣にあるところ。雇用促進住宅時代に、2Kを二つつなげて、3DKの広さにして貸していた。6畳、6畳、4畳半とダイニングキッチンがあり、風呂と脱衣場や洗濯機スペースもある。充実した作りで、家賃は5万円程度ということだった。

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この広さでフローリングにリノベーションしてあると、かなりゴージャスな印象を受ける。

駅から12〜3分でこの広さ、この家賃ならば、シングルマザー世帯は、子供が大きくなるまで、この地域で暮らせると思われた。

団地の敷地は、ゆとりがある作りとなっている。

自治会はしっかりしている印象

10数年にわたって、新規募集をしていなかったと聞いていたので、ゴーストタウンのイメージもあったが、そんなことはない。自治会があり、ゴミ捨ての注意などが書かれている。そして、パンジーなど花がが植え込みには植えられていて、心が和んだ。

近くには、保育園、小学校、放課後デーザービスなどがあるようだった。またコンビニもすぐ近くにある。

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続いて、尼崎市の清水南住宅に向かった。こちらは、11階建ての大規模なタワー団地である。ロの時型で、東と西に向かって窓が向かっている。工場地帯にある。やや機械的な印象のある建物だったが、敷地が非常に広く遊具もあるし、集会所は和室洋室ともに広く、ここでいろいろなことができるのでは、と思った。

福岡市内、通勤に便利な地域にも

5月には福岡市内の住宅も見学した。

香椎浜にある住宅は、ちょっとおしゃれなデザインの14階建ての150戸の住宅である。築30年のこのビレッジハウスの中では新しい建物。

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2LDKの間取りで南側に二部屋あるのがいい。

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バスの営業所の隣地で福岡中心部まで高速道路が通り、バスの便もいいので通勤に便利だ。また買い物もイオン、コンビニなどがあり、便利そうだった。

広い庭があり、子どもたちが遊べるスペースは広い。

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福岡市内のシングルマザーは月に14万円くらいの収入が平均的だという。児童扶養手当が4万円弱なので、なんとか払える額ではないか。子どもが大きくなっても住んでいられそうなのが魅力的だった。

福岡市内はそのほか、桧原(3DK、1970年築、90戸、賃料は43000円~47000円)、姪浜(2K、1972年築、160戸、38000円~42000円)などを見せてもらった。桧原は福岡市中心部からは遠いが、間取りは十分。姪浜はユニクロも近く、便利は抜群。小さい子のいる母子世帯か、単身向きの広さと感じた。またエレベーターがあるなしも違う。

NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福岡の理事長の大戸はるみさんは「福岡の東、南、城南、西とまんべんなく広がっており、部屋の広さや間取りの問題はありますが、学校区を変わりたくないなどのニーズに応えられるかと思いました。 またバス路線が発達しているので、所用時間を気にしなければ、交通の便利はそれほど悪くないところばかりでした。 急いで探さないといけない事情がある場合などに、手続きがそれほど面倒でなく、すぐ入居でき、初期費用が少なくて済むことはなによりだと思います」とコメントしています。

ビレッジハウスは、リノベーションによっては家賃が上がる仕組みでエアコンを入れたら2000円家賃が上がる。

入居に際し、敷金だけで、礼金や手数料は不要、保証人も不要(保証協会を利用)。保証協会は2社あるという。

また、公営住宅のように、抽選で入居が決まるということもなく空室があれば、手続きをして入居ができる。

1960年代、70年代の建築もあり、築年数が古いが、心配はないのだろうか。

フォートレスの担当者は「雇用促進住宅は古いが躯体はしっかりしている。70年は大丈夫」という。また、耐震工事の入っているところもあった。私は建築の専門家ではないので、こうした点も外部からの知見も今後求めたい。

日本のシングルマザーの平均年間就労収入は181万円。フルタイムで働いていても収入を上げていくのは厳しい。家計の収支を考えていくときに支出の3割~4割を占める、住宅費をどう抑えていくのかは、その世帯の生活の安定に大きくかかわる。教育費の捻出や老後の貧困を防ぐためにも住宅費の問題は大きい。

また、住宅問題に詳しい人からは、コミュニティをどう形成するか、集会室の利用や、若い人に入ってもらう、あるいは市民農園などの試みなどの案も出ていた。

見学した印象では、ぜひ東日本地域での落札・貸し出しも待ちたい。

ビレッジハウスは静岡以西の貸出を始めている。家賃にお金をかけられない、住宅探しをしている人々にこの情報が届いてほしい。そして自分の目で確かめてもらいたい。

https://www.villagehouse.jp/ja/

しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長 

NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長。当事者としてシングルマザーと子どもたちが生き生きくらせる社会をめざして活動中。社会保障審議会児童部会ひとり親家庭の支援の在り方専門委員会参考人。社会福祉士。国家資格キャリアコンサルタント。東京都ひとり親家庭の自立支援計画策定委員。全国の講演多数。著書に『ひとり親家庭』(岩波新書)、共著に『災害支援に女性の視点を』、編著に『母子家庭にカンパイ!』(現代書館)、『シングルマザー365日サポートブック』ほかがある。

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