入学お祝い金を365人の子どもたちに届けた!

(写真:アフロ)

「これだけ子どもたちの入学準備に困難を抱えている親(ひとり親)がいる。

小さなNPOとしてはあまりにも大きな問題に取り組んでしまったのではないか」

2月の初め、わたしたちは途方に暮れる気持ちになった。

お祝金の申込みの封筒。1月末には毎日数十通届いた
お祝金の申込みの封筒。1月末には毎日数十通届いた

わたしたちは、制服代にも困るひとり親家庭がたくさんいることをなんとかしたい、NPOにひとり親家庭の子どもたちに役立つように、と寄付をいただいたものを入学お祝金事業として、小学校、中学校、高校、大学等に進学する子どもたちひとりに3万円をお渡しする企画をした。

入学お祝金事業の広報を始め、自治体のひとり親相談担当部署に申込書を送ってから、申込みがひっきりなしに届くようになった。

結局、1月末までに、562人の子どもたち、約530世帯からの申込みが届いた。1月31日の深夜に、メールと証明書類を写メで必死に送ってきた母もいる。

困っている事情を書く欄に必死に書いてきた文章を読みながら、思った。あまりにも大それたことをしてしまったのではないか。こんな多人数の子どもたちに、どう責任をもったらいいのか。わらをもつかむ思いで、申込書を書いてきているこの方たちにどう私たちは対応できるのか。

「現在無職になってしまい、就活をして、働く予定ですが、貯蓄も少なく、入学時にかかる費用が不安で仕方ありません。娘も夢に向かって頑張っていますので、お金の心配をせず学ばせてあげたいです」

「中1でいじめに合い、引越をしたので、制服や体育着を古着を学校に借りていたので、高校はしっかり新しいものをそろえてあげたいです。」

2月、必死に寄付を呼びかけ訴えた。集会で訴えたところ、寄付をいただいたこともある。

ありがたかった。

結果、なんと500万円近くの寄付を積み増しすることができた。そして選考委員会を開き、365人のお子さんに入学お祝金を送る決定をした。

児童扶養手当の満額支給を優先した

選考基準の概要をお伝えしたい。

まず、ひとり親家庭に支給される児童扶養手当が、満額支給の世帯を優先した。

これだけで200人以上、3分の1以上を占めた。

なぜ、児童扶養手当なのか。

児童扶養手当の全額支給ラインは、生活保護の受給規準よりもかなり低く、子ども1人の場合は年収ベースで130万円である。

子どもが増えるごとに所得制限が上がるとはいえ、親子で食べていくことは非常に厳しいラインである。

その次に、多子世帯、3人以上のお子さんがいる家庭を優先し(年収250万円まで)、続いて、複数のお子さんが進学するご家庭も優先した。また、別居中等で児童扶養手当を受給できていない、しかし、生活は非常に厳しい家庭を優先した。続いて、親が障害をもっている、あるいは子どもが障害をもっているご家庭についても考慮した。また、18歳以上のお子さんがいて大学等に進学している場合、手当もこの子どもにはないので、さらに困窮することを踏まえ、こうした上のお子さんがいるご家庭も考慮した。また、熊本県で被災した方、熊本関連被災、東日本大震災被災者は、所得と関係なく、お祝金を渡すこととした。また、これまで接したことはなかったが養育家庭(祖父母が孫を養育している家庭)も困難をお持ちである場合には支給することとした。

そうした上で、児童扶養手当の一部支給額が、全額支給にかなり近い方も、考慮した。

生活保護世帯に関しては、それだけでは、支給対象としなかったが、前段に掲げたような事情がある場合には考慮した。

ランドセルを希望した方は1人だった。

こうしてお祝金は365人分を決定したのだった。

すべての人には送れない。つらい作業ではあったが、選考結果をお伝えし、3月初めには送金もほぼ終えることができた。

また選外の方には、図書券を全員に送り、食料支援を約100世帯にはお送りする予定にしている。

早速、お礼とともに、高校の合格通知がきまり制服の採寸があって、制服代の支払いが迫っているといった報告が来ている。

お祝金事業を企画した理由とは

もともと、このお祝い金事業を企画したのは、中学高校の入学時に、制服代が高くて払えないという母親たちの悩みを聞いていたこととともに、銚子市で県営住宅家賃不払いのために明け渡し請求をされた母子の母がかわいがっていた中学生の女の子を殺害した事件があったからだ。この事件を傍聴したところ、母親は闇金の取り立てに苦しんでいたこと、そもそも中学入学時の費用負担ができずに闇金からお金を借り、このために県営住宅家賃を滞納してしまったことがわかったからでもある。

なぜ、そこまで追い詰められたのだろう、どこかの団体とつながれなかったのか、という思いがあった。

しかし、たくさんの申込書のなかには、さらに緊迫した事情が伝わってきた。

生活保護も受けられず、就労もできず、貸付金も借りられず、食事もとれないと…

――数年前に夫のDVで家をでました。実家にしばらくお世話になっていましたが、実家の父が借金をかかえ、実家もなくなってしまい、現在母と一緒に4人で暮らしています。

私も、フルタイムで働いていましたが、体をこわし今は自宅にあるものを売りながら母の年金で生活をしています。毎月お金がなく、今月も 今日、明日の食事はとれません。

子供だけでも何か食べさせてやりたく、こども食堂という制度を知り、電話をかけてみましたが、一食200円するそうで、断念しました… 次女は3学期の教材費が払えず、(中略)ただただ今は子供たちに何かを食べさせてやりたいです。

生活保護の申請も何度か行きましたが、夫へ連絡がいくと言われ、こちらも断念しました。DVだという事情を何度も話しましたが、全く聞いてもらえませんでした。

長女が今は一生懸命勉強をしてくれていますので、どうしても高等学校には行かせてやりたいと思い市役所へ支度金の相談にも行きましたが、実家もなく、保証人もないため難しいと言われました。

(中略)

市役所へ行っても、力にはなれないと言われてばかりでしたので、このような活動があるなど知りませんでした。私のようなシングルマザーさんはたくさんいらっしゃると思います。

こちらの活動でたくさんの方が救われますように。――――

生活保護申請時、DV被害家庭は元夫に扶養照会をしなくてよいルールがあるが、残念ながらこのルールがきちんと適用されていなかった。娘さんは無事高校に入学したという。お母さんには、再度支援ができると伝えたが、残念ながら今のところは自力でがんばってみるという返答だった。いつでも相談してくれるように伝えた。

就労収入がなく、事情を聴こうとしても電話がつながらず、児童扶養手当と児童手当のみで暮らしていると思われる家庭も数家庭あった。

今後、こうした家庭が、ほかの食料支援や、相談先とつながるよう、働きかけをするとともに、入学後にアンケートを実施し、お祝金の使途や生活の状況についてお聞きしたいと思っている。

ひとり親、あるいは低所得の世帯の子どもたちをここまで追い詰めているものは何なのか。何を改善していくことが必要なのかも提案していきたい。

親の就労収入を上げていくことはもちろん必要である。シングルマザーの就労率は世界的に見てもトップクラスであるにもかかわらず、そう、にもかかわらず、あまりにも就労収入が低いからだ。

なんと、100万円未満の就労収入の方は、562人中、218人に上った。

パートアルバイト、契約・派遣社員だけで323人、6割を占めた。

私たちは、シングルマザーキャリア支援プログラム未来への扉を実施している。

http://www.single-mama.com/miraihenotobira/

入学時の準備のために必要なこと

しかし、子どもたちの教育への支援がどうしても必要ではないだろうか。

以下のようなことが必要ではないだろうか。

・'''制服代が安くなる方法を関係者で工夫する

・地域で制服リサイクル交換会を開催する

・新入学のお金がかかる時期3月に就学援助を前倒し支給する(すでに福岡県久留米市などで実施)

・入学準備の就学援助金を積み増しする

・学校教材費の負担をなくす真の意味での義務教育無償化'''

等々を検討しつつ、今後、お祝金を受け取った方たちへのアンケートを実施し結果とともに伝えたいと思う。

私たちがこういう支援をしなくてもいいような、そんな社会を実現するために、微力ながら努力していきたい。