NTT、オープンイヤー型ヘッドホン用ANC技術を開発。耳をふさがないけど騒音低減
NTTは、耳をふさがないオープンイヤー型ヘッドホンにおいて、周囲の騒音を耳元で低減するアクティブノイズコントロール(ANC)技術を確立したと発表した。 【画像】密閉型ヘッドホンとオープンイヤー型ヘッドホンのANC比較図 これまで同社では、“聴きたい音が周りに漏れず自分だけに聴こえ、聴きたくない音はカットする” プライベートな音空間を実現するための「PSZ(Personalized Sound Zone)」技術を確立するため、オープンイヤー型ヘッドホンの設計技術の開発に取り組んできた。グループ企業NTTソノリティの “nwm” ブランドからは、実際にPSZ技術を活用したヘッドホン/イヤホンを発売している。 同社のオープンイヤー型ヘッドホンは、耳をふさがないため周囲の物音を自然に聞き取りつつ、音漏れを抑えながら音楽を楽しむことができ、耳が疲れにくく長時間の着用が可能という長所も備えている。その一方、周囲の騒音が大きい環境では音量を上げて使用する機会が増え、騒音性難聴につながる懸念があった。 一般的にヘッドホンでは、周囲の騒音を低減するための手法として、耳の外側の “参照マイク” と耳元の “誤差マイク” により騒音を集音/分析し、それを打ち消す逆位相信号を生成するANCと、物理的な構造で耳をふさぐパッシブノイズコントロール(PNC)の2種類の方式が用いられている。 ANCは1kHz以下の低周波を、PNCは1kHz以上の高周波を中心に減衰することができ、密閉型ヘッドホンではこれら2方式を組み合わせることで効果的な騒音低減を行うことが可能だ。 しかしオープンイヤー型ヘッドホンでは、耳をふさがない構造上、高周波の騒音が耳にそのまま到達してしまう。特に人間の聴覚は3kHz付近の周波数が敏感に聞こえるため、オープンイヤー型ヘッドホンで効果的に騒音を抑えるには、ANCで1kHz以上の高周波を打ち消す必要があった。 この課題に対し、同社ではANCシステムの「音響的遅延」と「機械的遅延」を減らす技術を開発した。「音響的遅延」とは音が発生源から目標位置に到達するまでの時間差のことで、騒音の発生源とヘッドホンの参照マイク、ドライバーユニットと誤差マイクとの間などで発生する。 また「機械的遅延」は、機器やヘッドホン内部の機械的な部品が動作する際に生じる遅れのことで、例えば音楽信号がヘッドホンに伝わり、振動板が動いて音が鳴り出すまでの時間差として現れる。 この2種類の遅延を低減することにより、同社はオープンイヤー型ヘッドホンにおけるANCの広帯域化を世界で初めて実現。実際に飛行機内で評価したところ、1kHz - 3kHzの周波数帯域で最大13.7dB、平均7.8dBの騒音抑圧を確認したという。 同社では本技術により、騒音の大きな環境でもオープンイヤー型ヘッドホンの音をクリアに楽しめるようになるとアピール。製品化やANCのさらなる広帯域化に取り組みつつ、NTTグループ各社を通じて本技術を活用したサービス展開を進めていくとしている。 また、11月25日(月) - 29日(金)に開催する技術展「NTT R&D FORUM 2024 ―IOWN INTEGRAL」にて、本技術を搭載したヘッドホンを参考展示するとのこと。
編集部:成藤正宣