東北の若いマタギが禁じられた熊狩りに挑む。山を歩く時間が大半を占める挑戦映画『プロミスト・ランド』【杉田雷麟×寛一郎インタビュー】
飯嶋和一の1983年の小説が原作の『プロミスト・ランド』は、東北のマタギ文化が残る山間部で、ふたりの若者が禁じられた熊狩りに挑む映画だ。閉鎖的な町の暮らしに辟易する信行(杉田雷麟)は、熊狩りを認めない役所の決定と年長者たちの諦めに憤る礼二郎(寛一郎)に導かれ、彼と共に山に入る。セリフや説明が削ぎ落され、大半をふたりが山を歩く時間が占めるこの作品は、荘厳な自然の中で熊を追う若いふたりの人間ドラマを通して、マタギ文化や生命のあり方を生々しく伝える。映画という表現の力を信じた挑戦的なこの作品に、杉田雷麟、寛一郎のふたりはどう向き合ったのか、話を聞いた。
少ないセリフで、ただただふたりで雪山を歩いた
――飯島将史監督のインタビューによると、脚本は当初のものからかなり変わったそうですね。 寛一郎:そうですね。最初はもっと、山以外のシーンが多かったです。 杉田:いろいろなシーンが削られていって。僕が礼二郎の奥さんと話しているシーンとかもありました。 寛一郎:あったね。決定稿の脚本と完成した映画も違うんですよ。監督が「これも撮っておきたい」と言って撮っておいたシーンもありましたし、編集で順番を入れ替えたところもあります。
――完成した映画では、セリフはかなり少なかったですね。 寛一郎:そうですね。ただただ、山を歩いてましたからね。 ――セリフが少ない脚本から、物語や役の心情をどのように理解していきましたか? 杉田:ト書きで信行や礼二郎の気持ちや天気、山の様子が細かく記されていたので、想像することができましたね。ただ、山での撮影は、現場に行くとその通りにはいかなくて。やっぱり雪山は、体験しないとわからないことが多かったですね。
流されて生きる中、何かが変わるという予感で熊狩りへ
――信行と礼二郎というキャラクターがとても魅力的でしたが、役者として、彼らの面白さや演じがいをどこに感じましたか? 杉田:ノブ(信行)が、成長していく過程ですね。礼二郎やほかのキャラクターと関わる事で、最後のシーンまでどんどん成長していくので、台本を読んだ時は、その変わっていくさまが やりがいだなと思いました。