「自分自身も楽しむということを大切にしたい」水原希子さんが思う持続可能な未来
井植 希子さんの活動と共通していると思うのは、ひとつのサブジェクトだけじゃなくて、何か違うものと掛け合わせて、新たな価値観を創出していくところ。そこから新たな方向性が見えてくるというのは、すごくワクワクします。 水原 そうですね。今、美の基準が大きく変わったなと、この業界にいてすごく思います。見た目よりも、どういう人なのか、どういうことを発信しているのかという部分に注目する世の中になってきている。モデルも一昔前だったら最低でも170cm以上、痩せていることが基準になっていたけれど、今はもう関係ない。いろんなスタンダードや概念がどんどん壊されて、変化していっています。大きな変化の渦中にいることをすごく感じるんです。実のところはどうなの?っていう風に、大きなクエスチョンマークで問われる世の中に私たちは今生きている。 井植 希子さんだから見えるところがありますね。
水原 キークスのプロダクトには、ケミカルなものをいっさい入れません。ナマなので、使用期間が短いし、たくさんはつくれません。このことをネガティブに捉える方もいらっしゃるんです。例えば大きな商社さんとは取引できなかったりします。 でもキークスとしては、使用期間が短いということをもって、逆に問いたい。それって、どういう意味なのか。大量に作れないのは、それが本来の姿であり、ありのままだから。昔の人たちっていうのは、それが当たり前で生きてきた。 井植 そうですよね。アップサイクルも然りで、昔の人はそうはいわなくても、既にやっていたことですから。
水原 ちょっと前に、青森で裂織を体験したんです。これも昔からあるんですけど、アップサイクル以外の何物でもないですよね。使わなくなった浴衣などの生地を裂いて、混ぜて、織っていきます。ちょっとしたラグになったり、バックにしたりとか、いろいろできる。教えてくれたおばあちゃんがおっしゃっていたことが印象的で、「元々あったよりもさらに美しく生まれ変わらせるっていうことがポイント」だと。 私が考えていることと一緒だ!と思いました。だから私も学んで、今の若い人たちに格好いいでしょ!って見せたい。昔からあるものだけど、まるで新しいものであるかのように、格好いいとか素敵だと思ってもらえることが大事だと思う。 井植 いい話ですね。ファッション、音楽、自然、海の底と、いろんなところにありながら、それがひとつにまとまっているところが希子さんの魅力。等身大でいながら、すごく強いメッセージを発信している。それをみんなとシェアするところに原動力がありますね。