東京五輪の次の2022年北京冬季五輪にも「最悪シナリオ」…IOC最古参パウンド氏が海外メディアに発言
IOC(国際オリンピック委員会)の最古参委員のリチャード・パウンド氏が、1年延期した東京五輪に続き、2022年2月の北京冬季五輪にも新型コロナウイルスの影響が続き収益減など「最悪のシナリオ」となる可能性を示唆した。五輪競技を扱う英国のスポーツサイト「inside the games」のインタビューに答えたもの。パウンド氏は、「IOCは、コロナウイルスのパンデミックに対する懸念が広がる中で、(五輪大会の)2020、2022の両方が収益減になるという最悪のシナリオの可能性について考慮しなければならない」とコメントした。 IOCのトーマス・バッハ会長も、ドイツ紙のインタビューに答え、「数億ドル(数百億円)の追加費用に直面することになる」と1年延期することによって生じる東京五輪の追加費用について負担する考えを明らかにしていた。だが、各国際競技連盟は、1年の延期で財務状況が厳しくなっているため、五輪の分配金の増額を求める声が強く、IOCには、さらなる負担がのしかかるという。 同メディアによると、「IOCは、各国際競技連盟が東京2020で、いくら受け取り、いつ支払いを受けるのかの詳細を明かすことを拒んだ」というが、2016年のリオ五輪では、大会後に各国際競技連盟に5億4000万ドル(約580億円)が分配された。大会での観客数や、その規模に応じて分配金をランク付けしていた。 パウンド氏は、この問題についても触れ、「各国際競技連盟に単純にチェック(小切手)を郵送するよりも、もっと微妙な計算が必要となる」と、釘を刺したという。さらに「最終的な利益がどれだけでるかわからないのに、前もって分配金を求められたときは、そういう給付関係に応じないようにすることも重要」とも語った。
ただ「IOCはあらゆる影響について準備を怠らず考えている。援助を本当に必要とする国際競技連盟(や他の出資関係者)の助けとなるように最善を尽くすと確信している」とも付け加えた。 パウンド氏は、現在、IOCの要職にはないが、新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪の開催が危ぶまれていた2月に「5月下旬までには(開催可否が)判断される」「事態が収束しなければ中止も」などの問題発言を続けてきた。1年延期が決まったのは5月下旬ではなく3月下旬だったが、責任のない委員が、非公式発言を打ち上げることで世論の反応をうかがうという役割を果たしてきた。今回の「新型コロナが2022年の北京冬季五輪にまで影響する」との警鐘も、なんらかのメッセージを込めての発言だったのだろう。 1年の延期により東京五輪の追加費用は約3000億円以上が必要と試算されている。IOCが数百億円を負担することになったとしても、それは全体の3分の1にも満たない。しかも、IOCには、かなりの内部留保金があると言われている。パウンド氏は、東京五輪、北京冬季五輪での収益減を嘆いたが、結局、その影響を大きく受けるのは開催都市ということになる。 五輪のような大規模なイベントは予期せぬ気象災害や今回の感染症のようなアクシデントに弱いとされているが、そろそろ派手な招致合戦を繰り広げて、各都市が多額の予算を使って開催するオリンピックのあり方を見直さねばならないのかもしれない。