リバプールと互角の戦い…昇格組イプスウィッチとは? 3万人が熱狂した“23年ぶりの一日”【現地発コラム】
今は亡き名将2人の名が冠されたスタンド
リバプール寄りの取材目的で訪れていた筆者にとっては、26年ぶりのポートマン・ロードだった。リーグカップ戦でイプスウィッチの中盤にいたマット・ホランドは、今やクラブの役員リストに名を連ねている。思い返してみれば、前回は対戦相手のチェルシーから、ジャンフランコ・ゾラの写真も観戦プログラムの表紙に掲載されていた。 今回の表紙は、味のあるイラスト。レトロなユニフォーム姿のお父さんが、最近のユニフォームを着た女の子を肩車している。今季のホームゲームでは毎回、地元出身アーティストの作品がプログラムの表紙を飾るとのことで、ますます気に入った。 監督コラムでは、キーラン・マッケナが「一体感がシーズンの鍵を握る」と述べている。2021年12月に就任し、続く2シーズンで3部リーグからの連続昇格を実現した38歳は、注目の国産若手監督。昨季終了後には、チェルシー新監督候補とも目されたが、新契約を結んで残留を決めている。過去2年半で特別な「絆」が生まれた同志たちと、プレミアに挑みたい気持ちは当然。本来、そうあるべきだとも言える。 1万人近く収容人数が増えたホームスタジアムは、北側のゴール裏スタンドにサー・ボビー・ロブソン、反対の南スタンドにサー・アルフ・ラムジーという、今は亡き名将2人の名を冠するようになってもいた。1969年から13年間指揮を執った前者は、FAカップとUEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)のタイトルをもたらした。改名された北スタンドの外壁には、「一寸たりともボビー・ロブソンの上に位置する監督などいない」とする、サー・アレックス・ファーガソン(元マンチェスター・ユナイテッド監督)による賛辞がある。 後者は、イングランド代表の66年W杯優勝監督。大会3年前、FA(イングランドサッカー協会)は、その前年にクラブ史上初の1部昇格でリーグ優勝を成し遂げていた指揮官を引き抜いたのだった。イプスウィッチは、実績面でも地元民が胸を張れるクラブでもあるのだ。 スタジアム周辺を歩いていると、リバプールのチームバス到着に出くわした。2台目の運転手は、、スタジアム入り口で切り返し。すると、アウェーサポーターたちに混じって見物していたホームサポーターたちは、「一晩明けたらクビだな!」と合唱。通常は、プレッシャー下の相手監督をやり込めるチャントを歌いながら笑っていた。