アギーレJがシステム変更で見せた自立力
前半20分を過ぎたあたりから、キャプテンのMF長谷部誠(フランクフルト)はベンチからゴーサインが出るのを待っていた。インサイドハーフを務めた遠藤保仁(ガンバ大阪)も、長谷部と思いをシンクロさせながら幾度となくピッチ上で話し合いも持っていた。 ハビエル・アギーレ監督が就任と同時に日本代表へ導入した「4‐3‐3システム」が、ほぼ機能不全に陥っていた。マイボールになると逆三角形型で形成される中盤の底、アンカーと呼ばれる位置からセンターバックの間に下がり、攻撃のビルドアップの起点となる長谷部にオーストラリア代表の選手がマンツーマン状態でマークに下がってくる。 相手ボール時には、長谷部の左右に生じるスペースを巧みに突かれてチャンスを作り出される。急いで対策を講じなければ後手を踏み続け、やがてはゴールを陥れられ、黒星を喫してしまう。ピッチ上で戦う選手たちの中で膨らみ続けていた危機感を、アギーレ監督も共有したのか。 前半28分過ぎだった。ベンチ前のテクニカルエリアに立ったアギーレ監督が、フォーメーションの変更を指示する。「4‐3‐3システム」から、ダブルボランチを置く「4‐2‐3‐1」へ。ザックジャパン時代に慣れ親しんだ戦い方の下で、時間の経過とともに日本が主導権を奪い返していく。 来年1月に開催されるアジアカップのホスト国であるオーストラリア代表をヤンマースタジアム長居に迎えて、18日午後7時24分にキックオフされた2014年最後の国際親善試合。アジアのライバル国のひとつはアンジェ・ポステコグルー新監督の下、日本とまったく同じ「4‐3‐3システム」を採用している。 どんなシステムも、長所と短所とを併せ持っている。自分たちがやられて嫌なことは、日本にとってもボディーブローのように効いてくる。キックオフ前からオーストラリアは長谷部にターゲットを絞り、攻守両面でアギーレジャパンを封じ込めにきた。長谷部が振り返る。 「前のホンジュラス戦を見ていたのか、立ち上がりからオーストラリアは自分たちを研究してきた。上手くつなぐことができないので日本はロングボールが多くなったけど、そうなれば大きな選手が多いオーストラリアが有利になる。20分過ぎくらいまではセカンドボールを拾われて、球際での1対1でも負けて押し込まれてしまった」。