アギーレJがシステム変更で見せた自立力
この6試合で数多くの選手を招集してきたが、指揮官の眼鏡にかなった選手たちは、武藤を除けばワールドカップ・ブラジル大会までの4年間で主軸を務めてきた経験豊富な選手たちと、たまたま重複した。彼らもまた、ブラジルで味わされた悔しさを晴らすために、窮地に陥ったときの臨機応変な対応力の大切さを胸に刻みながらそれぞれの所属クラブで精進してきたのだろう。 「形は4‐3‐3ですけど、実際には自由にやっている。あまりシステムにはこだわらずに自分たちのいい部分を出せればいい。全体的には進歩しているし、(4‐3‐3は)これから精度を高めていけばいい。前線からのプレスがしっかりとできるかできないかで全然違ってくるし、ハセ(長谷部)の脇のところが一番のウイークポイントになるので、そこを使われないためにも、僕たちを含めた前の選手が後ろの負担を減らすようにパスコースを限定していくことが必要かなと。この時期に課題が出ることはプラスに考えないと。時間が経てば、さらにスムーズにいくと思う」。 ホンジュラス戦では圧巻のパフォーマンスを見せつけた34歳の遠藤がアギーレジャパンで初めて共有した時間を振り返れば、ここまで全6試合に出場してきた本田は手応えと課題の両方を得たと言う。 「最初は我慢だなと思っていたし、経験のある選手が出ているということで、臨機応変にシステムをチェンジできるという収穫もあったんじゃないかな。実際に変えてからよくなった点も含めてポジティブに見たいけど、オーストラリアの時間帯のときに自力で押し込むことができなかったのは新たな課題。アジアカップは経験が大事。前回大会もその場しのぎというか、根性みたいなところで優勝しましたけど、格下と戦っても一筋縄じゃいかないというか、いろいろなハプニングがあるじゃないですか。そこでしっかり勝つという意味では、この2試合が証明したんじゃないかと。一歩前に進めているんじゃないかと思うので、これで後ろに下がらないように続けてやっていきたい」。 突貫工事の感は否めないが、アギーレジャパンにとって最初の公式戦であるアジアカップを戦うベースはようやくできあがった。しかしながら、あくまでも短期的な目標成就へ向けてのメンバーであり、ワールドカップ・アジア予選を勝ち抜くために中期的な目標、そして4年後のワールドカップ・ロシア大会という長期的な目標に臨むメンバーは変わってくるはずだし、変わらなければ苦戦を余儀なくされるだろう。 オーストラリア戦には出場しなかったが、おそらくはアジアカップ代表の23人に名前を連ねるはずの22歳のMF柴崎岳(鹿島アントラーズ)をはじめとする若手は、苦しみながらも勝利した90分間から何を感じ、学びとったのか。「自分も選ばれるかどうかわからない」と前置きした上で、長谷部は2大会連続5度目の優勝がかかるアジアカップをこう見据えている。 「いろいろなバリエーションを持つことが大事。ホンジュラス戦は(4‐3‐3で)いい形でできたし、今日はシステムを変えてからは相手にほとんどサッカーをさせなかった。手探りと言ってはあれですけど、システムも新しいやり方もまだまだ始まったばかりですし、もちろん完成形に至ったわけでもないので、相手にとってもつかみづらいと思う。(集合から)開幕まで2週間ほどの準備期間があるので、多少は詰められるんじゃないかな」。 オーストラリア戦終了とともに解散したチームは、12月中旬のアジアカップ代表メンバー発表を経て同下旬に日本国内に集合。越年合宿を経て、真夏のオーストラリアへ乗り込む。 (文責・藤江直人/スポーツライター)