SNSで育児社員を“子持ち様”とやゆ 「働くな」と批判も なぜ? 人事のプロが指摘する“根本的な問題”
仕事のプロセスも丁寧に観察する
評価者である上司が、期初の仕事の目標設定や割り当てだけしか見ておらず、育児をしている人のサポートのようなイレギュラーな仕事について、きちんと観察できていないと、部下が不満を持つことになります。つまり、最初に個人に与えられた役割や目標と、その結果だけを見て最終的な評価をした場合、誰かの穴埋めやサポートをした人は「やり損」になってしまうというわけです。 また、他者をサポートした側が、「私はこの人があけた穴を埋めましたよ」と自分から声高にアピールすることは、控えめな人が多い日本においては、なかなかできることではありません。そのため、上司が仕事の結果だけでなく、プロセスもきちんと見て、正当に評価をしてあげることが重要です。それができれば、そもそもの不満は生じないはずです。
「組織市民行動」がなされていない
ただ、日々、自分の仕事でも忙しい「プレイングマネジャー」的な上司が、事細かに部下の行動を完璧に観察するというのは、現実的ではありません。部下の行った善行をつい見逃してしまうこともあるでしょう。 そんな場合でも問題が起こらないようにするには、職場で働く人たちが、自分たちの組織に対する高いコミットメント(≒貢献欲求)を持つことです。自分の役割外であっても、組織のためにする行動を「組織市民行動」(Organizational Citizenship Behavior)と呼びますが、高い組織コミットメントがあれば、組織市民行動のような細かい利他的行動、組織のためになる行動を苦にすることはないでしょう。
成果主義により役割外行動をしなくなった
昔の日本企業においては、組織のために気の利いた役割外行動をすることは、「組織市民行動」などと呼ばずとも、当然のことのように行われていました。 しかし、バブル崩壊後に余裕のなくなった企業が成果主義をなし崩し的にどんどん導入していったことで、人々は自分の役割外の貢献行動をする意識が減っていったように思います。 成果主義が導入されてから「これは自分の役割ではありません」「目標には入っていません」という言葉をよく聞くようになりました。このような環境で、同僚が子育てで何か仕事に穴をあけた際に、自分からサポートする気持ちが湧かなくても、なかなか責める気にはなりません。