〈子供の安全〉公園で子どもに声をかける大人は「不審者」か?~防犯の視点から~ 小宮信夫・立正大学教授
住民パトロールも同様だ。パトロールで不審者探しを続けると、地域には敵意が異常発生してしまう。なぜなら、パトロールを継続するためには理由が必要であり、「不審者」が存在することが、その最大の理由になるからである。そのため、パトロールでは、地域にとって異質な人や見知らぬ人を「不審者」と見なして、パトロールの成果を誇示しがちになる。 そうした人たちを「不審者」と見なして、地域という集団から排除すれば、それだけ集団のコントロールが及ばない範囲を広げることになる。それは、互いに助け合う関係が弱まることにほかならない。敵を作ることばかりに走り、味方を増やすことを考えなければ、みんなで守り合う関係が成り立たなくなるということだ。とすれば、パトロールも、人ではなく場所に注目した方がいいことになる。それが、欧米で盛んなホットスポット・パトロールだ。日本でも、この方式への切り替えが望まれる。 このように、皮肉なことではあるが、「不審者」という言葉が使われれば使われるほど、犯罪が増加するおそれがある。「不審者」というレッテルの張り合いをエスカレートさせる前に、人から場所への発想の転換を試みてほしいものだ。 ----------------------- 小宮信夫(こみや のぶお) 立正大学教授(社会学博士)。ケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科修了。警察庁「持続可能な安全・安心まちづくりの推進方策に係る調査研究会」座長。著書に、『犯罪は予測できる』(新潮新書)など。公式ホームページ「小宮信夫の犯罪学の部屋」 参考 どう防ぐ? 子どもの連れ去り 立正大学教授・小宮信夫