世界の農業に〝革命〟もたらすか 沖縄「OIST」発企業が開発した画期的な吸水素材
エコ・フレンドリー(環境に優しい)の頭文字から「EFポリマー」と名付けられた。
大きな転機は2019年、起業家らを支援するOISTの「スタートアップ・アクセラレーター・プログラム」への応募だった。ナラヤンさんの研究は見事、採択され、インドから来日することになった。
ナラヤンさんは「来日して間もなくから仕事の面だけでなく、生活面でもサポートしてくれたOISTの人たちは家族のような存在。事業が軌道に乗るための土台作りに大いに貢献してくれた」と振り返る。
これに対し、支援プログラムを担当するOIST事業開発セクションのシニアマネジャー、長嶺安奈さん(45)は「これまで縁のなかった遠い沖縄の地で活動を始め、着実に事業を成長させる姿から、私たちも多くのことを学んだ」と話す。
■世界9位の研究機関
OISTは平成24年、政府の沖縄振興策の一環で開学した。歴史が浅いため、よく知らないという人も少なくないだろうが、実は、英科学誌ネイチャーの発行元が2019年に発表した「質の高い論文ランキング」で世界9位と評価され、東京大(40位)や京都大(60位)を抑え、国内でトップだった。
一般的な大学とは異なり、5年一貫制の博士課程しかなく、学内の公用語は英語。学生や教員らは世界60以上の国・地域から集まり、学生の約8割、教員の約6割を外国人が占めている。
所管も文部科学省ではなく内閣府だ。約200億円の運営費は沖縄振興予算で賄われている。
研究者にとって、この潤沢な運営費は大きな魅力で、国際色豊かな研究者が集まる。客員教授を務めるスウェーデン出身のスバンテ・ペーボ博士も、2022年にノーベル生理学・医学賞を受賞した際、「OISTの資源も活用して長期的に研究ができたおかげだ」と語っていたほどだ。
OISTの研究分野はゲノム(遺伝情報)解析や量子物理学、海洋生物学など多岐にわたるが、基礎研究は産業化に直結しづらい側面もある。それだけに、OIST発のスタートアップに対する期待は大きい。