口癖は「国を守る、国民を守る」の海上自衛隊海将・近藤奈津枝さん 持ち歌は振り付けも完璧な『女々しくて』
「あるとき、なっちゃんから『長谷川さん、ごめんなさい。私は自衛隊を辞めるまで、もう海外には行きません』と言われたのです。国内で遊びに行くにも、職場から1~2時間以内の場所しか行けないし行かないとのことでした。それだけ責任が重くなったのでしょうね」 お互い独身のため、結婚を話題にすることもあったという。 「なっちゃんは『私は(結婚)しますよ』と言っていたけど、真剣にお相手を探しているそぶりは見えませんでした。どうしても仕事を優先してしまっていたのかも。 だから、よく『部下はいっぱいいる。家族みたいなもの』と話しています。そんな思いもあるためでしょう、『国を守る、国民を守る、部下を守る、部下の家族を守る』が口癖ですね」 このように徹頭徹尾、自衛官となった近藤さんに対し、入隊時は「私はあなたを自衛官にするために大学に行かせたわけじゃない!」と、激しく反対していた母親も、次第に理解を示し、逆に応援してくれるようになった。 近藤さんが振り返る。 「何がきっかけかはわかりませんが、誰にでも私のことを『世界に羽ばたく自慢のなっちゃん』と言うようになったのです。見ず知らずの人を『ちょっとあがりんさい』と家に招き、居間に飾ってあった制服姿の私と安倍(晋三)元首相の写真を見せて『これがうちのなっちゃん』と、自慢していたそうです。 あれだけ反対しておきながら“どの口が言うの?”とも思うのですが、誇りに思ってくれたことは正直うれしいですね」 その母は10年ほど前、がんでこの世を去った。当時の勤務地は長崎県佐世保市だったが、2週間に1度くらいのペースで山口県の病院に顔を見せに行った。 「でも鎮痛剤などで頭がぼうっとしていて、1日半ぐらい一緒にいても、私のことを理解できないことがありました。それでも『あなた、なっちゃんに似ているわね、なんてかわいいの!』って言ってくれたのですね。あの一言は忘れられません」 意識が混濁していても、最後までなっちゃんのことを思っていたのだ。“自慢のなっちゃん”は、人望・判断力・想像力・統率力などが評価され、ついには海将へと昇任することに。 「内示を受けたときも“なぜ、女性である私が”とは、まったく思いませんでした。女性というだけでそこまで卑下する必要はありません。どの組織においても、資質や能力、実績、貢献度、影響度などを評価されて地位が与えられるものであって、性別、国籍、民族などの属性で与えられるものではありません」 とキッパリと語った。近藤さんを補佐する青木邦夫幕僚長もこう話す。