いつの間にか「ドル離れ」が加速していた世界の外貨準備、台頭する第三勢力の顔ぶれと今後の動き
■ 第三勢力としての「その他」の内訳 遡及可能な1999年3月末以降からの変化幅で見た場合、ドル比率は▲12.97%ポイント低下している。この裏側で最も大きく上昇しているのはユーロ(+1.64%ポイント)や英ポンド(+2.19%ポイント)、円(▲0.44%ポイント)などではなく、そうしたレガシー通貨に属さない「その他」の通貨群だ(図表(2))。 【図表(2)】 「その他」は1999年3月末から2024年6月末の間に+9.61%ポイントも比率を伸ばしている。2024年6月末時点の「その他」比率は11.30%で、米ドル、ユーロに次ぐ第三勢力である。 その内訳が判明しているのは今のところ3通貨だけで、大きい順にカナダドル(2.68%)、豪ドル(2.24%)、人民元(2.14%)となる。まだ、単独で円や英ポンドの比率を超えることはないが、スイスフランよりは大きい存在だ。 もっとも、非西側陣営に属している国々では、IMFのCOFERデータに内訳を報告していないケースも多々あるだろう。そうだとすると、推測の域を出ない話だが、世界の外貨準備における人民元の比率はもっと多いかもしれない。
■ 外貨準備のドル比率とドル相場の相関が薄れた理由 通貨には価値保蔵・交換・価値尺度という3つの機能がある。上述した世界の外貨準備の潮流を見る限り、価値保蔵手段に関して言えば、ドルおよびユーロの2大通貨のプレゼンスは徐々に、しかし確実に弱まっていることは間違いない。 とはいえ、依然として交換手段および価値尺度手段としてのドルには旺盛な需要があり、それゆえにドル相場の価値は底抜けせずに済んでいるという解釈もできる。 【図表(3)】 図表(3)に示すように、ドルの名目実効為替相場(NEER)は2001~02年頃から2007~08年頃まで一方的な下落に直面しているが、その後は現在に至るまで上昇基調にある。 片や、COFERにおけるドル比率も2001~02年頃から2007~08年頃にかけて低下基調にあったし、その後、2016年頃までは上昇する期間もあった。 もちろん、これらは単なる相関で因果はないのかもしれないが、1999~2016年頃の時代はリザーブマネーがドル相場に持つ影響力が相応に強かったのではないかと思わせる状況証拠である。 ちなみに、1999~2016年頃という期間はユーロ誕生により「第二の基軸通貨」期待が過熱し、収束していった局面に相当する(図表(4))。 【図表(4)】 ラフに言えば、2000年代最初の15年間は各国中銀の外貨準備において「ドルからユーロ」、そして「ユーロからドル」というリバランスが相場に影響していた時代なのかもしれない。 では、2016年以降、ドル相場とドル比率の相関が薄れたのはなぜか。2016年10月1日から人民元がIMFの特別引き出し権(SDR)構成通貨として採用されたことが少なからず関係しているのだろう。