逃した魚が……阪神が獲得調査していた楽天ペゲーロ満塁弾の皮肉
阪神が痛い試合を落とした。17日、甲子園で行われた交流戦の楽天戦。2-2で迎えた8回一死二塁から島内のレフト上空を襲った打球が風に流され、レフトのポジションは、まだ不慣れな福留が目測を誤りタイムリー三塁打となった。さらに二死一、三塁とピンチが広がり、代打・枡田を一塁ゴロに打ち取ったが、原口が体に当てて弾き、二塁のカバーも間に合わなかった。2点差とされ、代わった5番手の松田が三好に四球を与え、満塁となって、真ん中に入った初球の真っ直ぐをペゲーロにバックスクリーンにまで運ばれた。打った瞬間、ペゲーロは微動だしない勝負ありの15号満塁弾である。 実はペゲーロは阪神にとっては因縁の外国人だった。 2年前の5月。マット・マートンが打てず打線の不振に悩む阪神は、新外国人の獲得調査を進め、そのトップにペゲーロがリストアップされていた。特に坂井オーナーが熱心で(この球団はシーズン途中など予算外の補強はオーナーが決断しなければ何ひとう前へ進まない)、当時、存命だった故・中村勝広GMに指令を飛ばしていた。 中村GMは、当時の和田監督だけでなく、信頼すべき関係者にペゲーロの分析を依頼、獲得を検討したが、結局、「パワーは桁違いだが、三振が多く、シーズン途中の獲得は、日本野球へ対応ができずに、ブンブン丸に終わる危険性が高い」と判断。加えて、ペゲーロの家族が米国で起こした不祥事が、阪神のような人気球団ではメディアのターゲットになる危険性があることから獲得を断念した。阪神だけでなく、巨人、中日もペゲーロを調査をしていたが、巨人なども同じ理由で獲得を断念している。 だが、楽天は、そういうネガティブな条件よりも、「パワー」というポジティブな面に目を向けて昨年シーズン途中に獲得に踏み切った。開花したのは、2年目となる今季だが、池山打撃コーチの指導などで、日本野球への適応をサポート。さらに2番に置いたことで、その思い切りのいいバッティングがブレイクして、今季は、ここまで首位を走る楽天の好調さを象徴するように、打率.264、15本塁打、48打点の成績を残している。本塁打は、パで3位。打点は4位の位置につけている。しかも、楽天の外国人獲得を含む編成部の責任者は元阪神のフロントにいた人間である。 パ・リーグとセ・リーグの野球の違いはある。ペゲーロが細やかな配球をしてくるセで同じような結果を残せたどうかはわからない。どちらかといえばパ向けの打者だろう。だが阪神は、結局、ゴメスが抜けたファーストベースのポジションが、死角のままだ。ここ数試合、原口が存在感を示しつつはあるが、ペナントレースの長いシーズンを考えるとウイークポイントである。現在、阪神のフロントは、一塁を守れる大砲候補の獲得調査を進めているらしいが、新外国人のキャンベルは2軍暮らしという中で、「もしペゲーロが阪神にいれば」と、結果論で考えるのは、少しひねくれすぎているのだろうか。 楽天の外国人獲得部門を見習えとまでは言わないが、阪神のフロントは「逃した魚」の問題をきっちりと総括しておかねば、まだ純国産で長いシーズンを乗り切るには不安なチームにおいて計算の立つ補強プランをしっかりと練ることが難しくなる。