【“マルキの闇”裁判終結へ㊦】兵庫県警機動隊員連続自殺 つかみとった「パワハラ」と“無念”の和解
■「兵庫県は謝罪を」大阪高裁が和解を勧告
しかし、二審の大阪高裁も「A隊員」の行為がパワハラにあたるとの認識を変えることはなく、双方に和解勧告を出した。 和解条項案には「A隊員」のフルネームが記載された上で、「兵庫県はA隊員が木戸大地巡査にパワハラを行ったことにより、精神的負荷を加えたことを真摯に反省し、遺族らに対し謝罪する」と明記された。 その上で、兵庫県が木戸巡査の両親に対し142万円の和解金を支払うことになっている。ただ、自殺とパワハラの因果関係については言及されていない。
■遺族は和解受け入れを決断も「無念」
木戸巡査の父・一仁さんは、因果関係が認められなかったことを「無念だ」としつつ、これまで費やした裁判費用などが700万円以上に上っていることなどから、これ以上闘い続けるのは気力、体力ともに限界だとして、和解勧告を受け入れることを決断した。 和解は3月22日に成立する見込みで、警察組織を相手とした遺族の長い闘いに終止符が打たれる。 兵庫県警の植村琢也監察官室長は「ご遺族の心労や心情を慮って、双方が歩み寄った形で解決を図ることが妥当と判断し、和解に応じることになった」とコメント。組織内のパワハラが認定されたことへの言及はなく、木戸巡査や遺族への謝罪の言葉もなかった。
■「真摯に反省」「謝罪」問われる兵庫県警
木戸巡査は、兵庫県警の警察官という仕事に誇りを抱いていた。息子の名誉を守るために闘ってきた遺族は、今でも兵庫県警という組織が、県民をはじめ国民から信頼される組織であってほしいと願っている。 「異例の連続自殺」をめぐり失われた信頼を回復するためには、今回の和解を受けて、兵庫県警がどう対応するかが問われている。和解条項案には「真摯に反省し謝罪する」と明記された。 兵庫県警が信頼に足る組織なのであれば、この書面だけで終わらせるのではなく、木戸巡査の遺影に手を合わせ遺族の目を見て謝罪すべきではないだろうか。2015年の内部調査で多くの隊員らが告発した組織内でのパワハラを、あの時に認め、しかるべき対応を取っていれば、8年半もの長きにわたり遺族がここまで苦しめられることはなかったはずなのだから。 失われた命はもう戻ってこない。兵庫県警には「真摯に反省し謝罪」した上で、二度とパワハラに苦しみ、自ら命を絶つ警察官が出ることのない職場づくりが求められている。それが、守ることができなかった仲間への償いだ。