平和への最大のチャンス、ウクライナ和平合意を壊したのは誰か 交渉当事者から新証言相次ぐ 「ロシアを追い詰めろ」が生んだ悲劇
同紙によると、ジョンソン氏がウクライナ訪問を終えた3日後には、プーチン大統領は「ウクライナとの交渉は袋小路に陥った」とこれまでの楽観的な見方を一変し、交渉が崩壊したことを示唆した。 ▽独元首相の証言 和平交渉に関して明らかになった、もう一つの証言がシュレーダー元ドイツ首相のものだ。同氏はプーチン大統領との親密な関係が知られ、政界引退後には一時、ロシア国営石油最大手ロスネフチ会長も務めた。今回の和平交渉では、ロシアとのパイプ役を期待され、ウクライナ側の依頼で仲介役を務め、プーチン大統領とも会談した。 シュレーダー氏は2023年10月21日のドイツ紙ベルリナーツァイトゥングとのインタビューで、和平交渉がほぼまとまっていたにもかかわらず「ウクライナでの消耗戦を続けさせることでロシアをさらに弱体化させることを望む」米国が合意受け入れを拒否したと語った。拒否の背景には、ロシアは弱体化しており、今がロシアを追い込むチャンスだとの米国側の誤算があったという。
2022年4月初めに明らかになり、ウクライナ側が態度を硬化させたことで、和平交渉崩壊の原因にもなったと指摘されるブチャの事件の影響については、「平和交渉の大半が、ブチャの事件が明らかになる前に終わっていた」と指摘した。 ▽拒否できなかった 米英の反対があったとしても、ウクライナだけで単独でロシアと和平合意を結ぶことはできなかったのか。 アラハミア氏のインタビューが波紋を広げた翌日の11月25日、ウクライナの人気ニュースサイトで政権批判で知られる「ストラナUA」はインタビューに関する長文の論評を掲載した。 この中で、同メディアは、ウクライナ政府が主張し、広く信じられているブチャ事件の影響について、ゼレンスキー大統領自身が事件発覚後、交渉継続の必要性を唱えていたことを指摘、影響は決定的ではなかったと主張した。 その上で「(ウクライナが必須と考えた)自国への安全保障について、ロシアや中国だけが行い、(米英など)NATO諸国が拒否すれば、ウクライナと西側諸国との間の完全な関係断絶につながる。ゼレンスキー大統領はそんな行動はとれなかった」として、当時の米英の対応が交渉に決定的影響を与えたと断定した。