「人も自然の一部」未来の疾病を防ぐカギ「ワンヘルス」 [韓国記者コラム]
【12月11日 KOREA WAVE】新型コロナウイルスの発生源についてはいくつかの仮説があるが、野生のコウモリが宿主だった可能性が高いとされている。また、歴史に残る感染症であるペストも中央アジアの野生齧歯類から由来したとの研究がある。 これらの事例は、人間社会だけに焦点を当てた対策では限界があることを示している。このような背景から、「人間」「動物」「環境」を一体として健康や保健問題に取り組む「ワンヘルス(One Health)」というアプローチが注目されている。 世界保健機関(WHO)は「ワンヘルスとは、人、動物、生態系の健康を持続可能で均衡の取れた形で最適化することを目指す統合的アプローチ」と定義している。この方法は、さまざまな分野や学問の協力を通じて、感染症の発生、抗生物質耐性、食品の安全性などの健康問題を解決することに寄与するとしている。 新型コロナウイルスの世界的大流行を契機に、ワンヘルスの重要性が再確認された。 気候変動による動物の生息地の破壊は、動物同士や動物と人間の接触頻度を増加させ、これが新たな人獣共通感染症の発生リスクを高めるとされている。例えば、水源地に新しい動物が現れることで病原体が人間社会に侵入したり、蚊のような媒介昆虫を通じて新たな疾患が拡散したりする可能性がある。 また、抗生物質が効かない「抗生物質耐性菌」も問題視されている。これらの菌は、野生鳥類などに潜み、人間社会に再び広がる恐れがある。耐性菌の発生には、人間が廃棄する医薬品や排水、畜産業で使用される抗生物質が影響を及ぼしていると考えられる。こうした菌は動物を介して人間に戻る形で広がる可能性がある。 ワンヘルスを推進する動きは、すでに世界各国で進んでいる。デンマークでは、抗生物質耐性菌問題を解決するため、食品安全栄養研究所と国立獣医学研究所を統合し、食品獣医学研究所を設立した。同研究所では、食品と飼料のモニタリングや細菌の環境伝播経路の追跡など、さまざまな政策や研究プログラムを運営している。また、デンマーク政府は2017年にワンヘルス戦略を策定し、抗生物質耐性問題に取り組んでいる。 アフリカでは、研究ネットワークを結成し、ワンヘルス教育や研究の能力向上を図る取り組みが進められている。一方、米国際開発庁(USAID)は「PREDICTプロジェクト」を通じて、動物と人間が接触する地域でウイルスの監視を実施し、949種類の新しいウイルスを発見する成果を挙げた。 WHOは、国際連合食糧農業機関(FAO)、国連環境計画(UNEP)、世界動物保健機関(WOAH)と協力し、ワンヘルスの観点から感染症管理を強化するため、監視システムの強化や人材育成、国際協力の推進に取り組んでいる。【news1 キム・スンジュン記者】 (c)KOREA WAVE/AFPBB News
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