最終話考察『海に眠るダイヤモンド』鉄平の想いが私たちに繋がる
物語はすべてを包み込み現代へと繋がった!日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS 毎週日曜よる9時~)最終話(2時間スペシャル)を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。
一瞬で転落してしまう鉄平の人生
『アンナチュラル』(2018)にしろ、『MIU404』(2020)にしろ、このチーム(脚本・野木亜紀子、演出・塚原あゆ子、プロデュース・新井順子らを中心とした座組み)が作るドラマはいつも、エンターテイメントでありながら私たちに今の現実を見せてきた。そんな人たちが挑戦した『海に眠るダイヤモンド』。昭和と2018年を行き来したこの作品では、50年以上前の端島が2024年の私たちに繋がった。 進平(斎藤工)とリナ(池田エライザ)の息子・誠が病気になってしまったことから、鉄平(神木隆之介)の暮らしは崩れ始める。出生届さえ出していなかった誠。鉄平の息子として届を? などと想像していたが、戸籍を取ってこられないリナに代わり、行方不明になったまま死亡届を出していない進平の前妻・栄子を母として出生届を出すとは、なるほど! と納得。これでこのまま戸籍上は栄子でありながら、端島では「リナ」として生きていけたはずだ。しかし、運命はそれを許さなかった。かつて進平がリナを守るために殺した小鉄(若林時英)の兄貴分(三浦誠己)たちが端島へとたどり着き、誠をさらってしまう。 石炭が再び出て、ようやく再び明るい兆しが見えはじめた端島。「石炭が出たら必ず」の約束を果たすため、朝子(杉咲花)を呼び出したその夜に、鉄平はリナとともに逃げざるを得なくなる。しかも、誠を取り返すため「小鉄を殺したのは自分」と宣言したことから、鉄平はひたすらに逃げ続けるしかなくなってしまった。戦争で兄や姉を失い、炭鉱で父と兄を失った鉄平。遺された母(中嶋朋子)、リナ、誠のために、その後の人生を日本全国を放浪して生きていくことになる。あんなにまっすぐな鉄平が、こんなにも一瞬で転落してしまうなんて。当然、危険が及ぶことを考えたら朝子に手紙さえ書けない。あらゆる場所で、手紙を何度も何度も書いては破る姿が切ない。