「ワクチン接種のメリットはリスクを上回る」新型コロナワクチンと心筋炎の関連について専門家が解説
欧州医薬品庁(EMA)は7月9日、新型コロナワクチンの副反応について、非常にまれな頻度で「心筋炎」が起こる可能性があると発表した。心筋炎とはどのような病気なのか。このリスクをどう捉えるのが妥当か。新型コロナウイルスに関する正確な情報を届けるプロジェクト「こびナビ」のメンバーでもある、安川康介(やすかわこうすけ)医師にお話を伺った。(Yahoo!ニュース Voice)
心筋炎ってどんな病気?
今回は、新型コロナワクチンと関連があるとされている「心筋炎」について、お話ししたいと思います。 心筋炎とは、心臓の筋肉に炎症が起きる病気です。炎症の強さや広がりによって症状が変わってきますが、典型的な症状としては、胸の痛みや息苦しさなどがあります。炎症の程度と範囲によっては、不整脈を起こしたり、心臓の機能が低下したりすることもあります。 診断には、血液検査、心電図、心臓の超音波検査、心臓のMRIなどが有用です。診断を確定するために、心臓の筋肉の一部を取ってくる心筋生検が行われることもあります。治療は、軽症の場合は対症療法を行いますが、心不全や不整脈が起きた場合はそれぞれに応じた治療を行うことになります。原因によっては炎症に対しステロイドや免疫グロブリンを使用することがあります。
はじめて心筋炎という言葉を聞いた方は、もしかしたら非常に特殊な病気が起きているのではないかと不安に思われるかもしれませんが、心筋炎を起こす原因はたくさんあります。 例えば、様々なウイルスや細菌による感染症、薬物や自己免疫疾患などが挙げられます。心筋炎を起こすウイルスとしては、コクサッキーウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルスやパルボウイルスB19、HIVなどが知られています。そして、新型コロナウイルス感染症も心筋炎を起こすことがあることが分かっています。また過去のワクチンで、天然痘に対するワクチンは、心筋炎をまれに起こすことが報告されています。