「いうほど一升瓶って装備したいか?」なぜか売り切れる日本酒ホルダー 開発のきっかけは「ブラフマン」愛
「最近やたら売れるのだが…」とある日本酒メーカーの社長がXに投稿した酒グッズの画像に注目が集まりました。そこには、大きな一升瓶をストラップで背負い、武士のように「装備」した姿が。なぜか即完売するという、謎の日本酒グッズの「開発者」を探しました。(withnews編集部・松川希実) 【話題の画像】一升瓶を「装備」した姿がこちら。「かっこよwww」BRAHMANも…!
花見シーズンだからですかね?
話題になったのは、秋田の地酒「まんさくの花」の醸造元である、日の丸醸造(@mansakusake)の投稿です。 《最近やたら一升瓶ホルダーが売れるのだが… いうほど一升瓶って装備したいか?》 戸惑いがあふれた文面。添付された画像には、オレンジのストラップで何かを提げた後ろ姿。一見すると、ショルダーバッグのようなおしゃれさですが、背負っているのは確かに「酒瓶」です。 この投稿には「かっこよwww」「めっっっっっちゃ装備したいっすねこれ!」「花見シーズンだからですかね?」「山車をひくとき、青年部壮年部に酒を振る舞うのに良さそう」などの反響があり、5万超の「いいね」がつきました。
「只今品切れ中」
いったい「日本酒ホルダー」とは、なんなのか。 グッズとして取り扱っている日の丸醸造のオンラインショップを見ると、「当店人気ランキング」で、看板商品「まんさくの花」を抑えた、上位に「オリジナル四合瓶ホルダー(税込3,630円)」を発見しました。すでに「品切れ中」です。 「オリジナル一升瓶ホルダー」も売り切れています。 酒を「装備」したい人の多さに驚かされます。
「たった一人のことだけを考えた」
いったいどんな発想で、日本酒ホルダーは生まれたのでしょうか。 製造元である静岡県の「本橋テープ」に問い合わせ、この日本酒ホルダーの生みの親、大石卓哉さん(営業グループサブマネジャー)にお話を伺いました。 もともとは、かばんのショルダーテープやヘルメットのあごひもなどの「細幅(ほそはば)織物」を製造している会社ですが、2000年ごろから「何か会社で完成品を作ろう」と試行錯誤していました。 その流れで生まれたのか、と思いきや、大石さんは「いや、違うんです」。「私が大好きな『鬼』がいてですね…」と熱く語り出しました。 「鬼」とは、ハードコアパンクバンド「BRAHMAN」のボーカル、TOSHI-LOW(としろう)さんの愛称でした。 熱烈なファンだという大石さんは、TOSHI-LOWさん率いるアコースティックバンドOAUがオーガナイザーを務めるフェス「New Acoustic Camp」からスピンアウトした「ACO CHiLL CAMP(アコチル)」が静岡で開催されることになってから、毎回、本橋テープとして出店しつつ、酒が大好きなTOSHI-LOWさんに地元の酒を差し入れるのを恒例にしていました。 ところが、ある年、会場で一升瓶を手渡した時に、TOSHI-LOWさんの顔が、一瞬曇ったことに大石さんは気づいたと言います。 「何がTOSHI-LOWさんを困らせたんだろう」。そこから一年、「考えて考えて考えた」という大石さん。 思い出すのは会場で、TOSHI-LOWさんがファンに求められたら快く握手に応じ、子どもたちにはステッカーを配り歩く、「ファンサ」する姿。日本酒を持っていたら、ファンサしづらいのかもしれない。 「……だったら背負えばいいじゃないか!」 「一升瓶」「ストレスフリー」「ファンサ」をテーマに、一升瓶をプレゼントしても「手ぶら」になれるホルダーを、自社の細幅織物で作ろうと思いついたそうです。