ドームから360度の眺望を楽しめる客車、ビールの試飲会も 日本語を話すスタッフも乗務、カナディアン乗車記④ 「鉄道なにコレ!?」【第60回】
2階の展望用座席から中部サスカチワン州の大平原を眺めていると、午後2時ぴったりにファラージさんが登場した。「私は今回が初めてのイベント車両担当なのです。皆さん、ようこそ来てくださいました!」とあいさつし、大きな拍手が起きた。 ファラージさんは、乗っているカナディアンの豆知識を次々と繰り出した。「この列車は16両編成で16人の客室乗務員がいますが、繁忙期の夏になると22両編成になって客室乗務員も30人程度に増えるんですよ」と説明した上で、「『駅にはそんなに長い列車を止められるほど長いプラットホームはあるのか?』と疑問に思うお客様もいると思うのですが、正解を言うとそれほど長いホームはありません」と断言した。 それを聞いた乗客が「ではどうしているの?」と合いの手を入れると、ファラージさんは待っていましたとばかりに続けた。「夏には客車のうち半分の車両をホームに止めた後、残る半分の客車は別のホームに入れるのです。このため、夏は皆さんが利用している食堂車もそれぞれに連結しており、今より1両多い2両あるんですよ」
▽謎の小箱の正体は…廃止された「終わるまで眠れない」サービス 続けてファラージさんは「寝台車プラスクラスの個室を利用の皆さんは入り口の扉の脇にふたが付いた小箱があるのに気づきましたか?」と問いかけた。私も含めて「気がつかなかった」という返答が相次ぐ中で、「昔は靴箱に使っていたのです。靴を入れておくと、夜中のうちに客室乗務員が靴を磨くサービスがあったのです」と解説した。 ファラージさんは「だから当時の客室乗務員は靴磨きが終わるまで眠れなかったそうです」との逸話を披露。「靴磨きサービスが廃止されて良かったです。そうでないと私も就寝できなかったので」と冗談を飛ばして聞き手を笑わせた。 やがてカナディアンは待避線で停止し、行き違いの貨物鉄道大手カナディアン・ナショナル鉄道(CN)の貨物列車が近づいてきた。ファラージさんはディーゼル機関車に手を振ると、「この列車は最高で時速130キロ程度まで出しますが、貨物列車との待ち合わせがあるので遅く感じるでしょう」と言ってこう続けた。