投壊、打線援護なく急失速…広島カープ、「勝負所」の9月、何があった?激動の今季を振り返る
就任2年目の新井貴浩監督(47)が率いた広島東洋カープは今季、4位に終わった。守り勝つ野球で9月上旬まで首位に立っていたが、同月にセントラル・リーグワーストタイとなる月間20敗を喫し、6年ぶりの優勝を逃した。歴史的な急失速はなぜ起きたのか。激動の戦いぶりを振り返り、来季の展望を考える。 【図表】今季のチーム成績
投手陣奮闘、優勝争いから一転
ぼう然とした表情で、抑えのエース・栗林 良吏投手(28)がベンチに下がっていった。9月11日、本拠地・マツダスタジアム(広島市南区)での読売巨人軍戦。首位攻防3連戦の2戦目で、2点リードで迎えた九回に登場した守護神は大乱調だった。4四死球を与えるなどし、6失点。一死も取れずにマウンドを降り、手痛い逆転負けとなった。「何とか踏ん張ろうと思ったけど、結果が出なかった」。懸命に声を絞り出す栗林投手の顔には、疲れの色が表れていた。
開幕前、カープの下馬評はあまり高くなかった。昨季は2位ながら、9月に9勝13敗と失速。オフには主力の西川龍馬選手(29)が移籍したが、大きな補強はなかった。それでも、終盤まで巨人や阪神タイガースと優勝争いを演じた。原動力は投手陣だった。
床田寛樹投手(29)を中心とした先発陣は安定感があり、救援陣も強力。8月までのチーム防御率はリーグ1位の2・25で、藤井彰人ヘッドコーチ(48)は「想像以上によくやってくれた」と称賛していた。
新井監督は今季、先発の登板間隔を維持し、救援陣の3連投もほぼ行わなかった。ブルペンでの投球数も減らし、投手が疲労をためないよう気を配ってきた。それでも「勝負所」の9月に入ると、打ち込まれる場面が目立ち始めた。10~12日の巨人3連戦では栗林投手が崩れた影響もあり、3連敗。続く13、14日の阪神2連戦でも連敗し、優勝への機運は一気にしぼんだ。9月の月間防御率はリーグ最下位の4・29。「投手陣に体力が残っていなかった」と新井監督は肩を落とした。
チーム本塁打数、「大谷」下回る
だが総得点数がリーグ5位の415と、援護の乏しかった打線の責任は大きい。大砲候補として獲得した新外国人選手たちは、けがで開幕早々に二軍落ちし、戦力にならなかった。飛躍を期待された3年目の 末包昇大選手(28)も9本塁打のみ。チーム本塁打数は12球団最少の52本で、国や試合数などが違うため単純比較はできないが、米大リーグで54本塁打を放った大谷翔平選手(30)(ドジャース)よりも少なかった。