これからは「都会のど真ん中」に住むべき? ドイツ最新研究が示す、温暖化対策時代の持続可能な暮らしのヒントとは
求められる環境に優しい住宅政策
前出のベリル博士は、 「市街の中心部に近い住宅開発を奨励する政策と、公共交通といった移動インフラの増強を組み合わせることで、自動車への依存と環境への影響を大幅に減らすことができる」 と述べている(気候変動センター・ベルリン・ブランデンブルク)。 東京の都心にさらに住宅を建設するとなると、高層ビルが避けられないが、首都直下地震の際の避難などが課題になる可能性がある。 果たしてすべての人が、移動距離を減らすために過密都市の狭い部屋に住みたいと思うだろうか。会社がある都心に通勤しつつも、家族との生活環境はゆったりとした郊外が望ましいというニーズはなくならないだろう。 日本の地方都市では、まだまだ住宅開発の余地が多く残っている。また、東京においても交通インフラの改善は可能だと考えられる。 住宅とモビリティは別々に語られがちだが、両方を統合したまちづくりを考える必要があるだろう。
子育て世帯支援の重要性
ベリル博士の研究によると、子ども連れの移動は自動車で行われる可能性が高くなることがわかった。子育て世代がより持続可能な移動手段に移行できるよう、追加支援が必要であると指摘している。 日本では、少子化対策が急務であり、2023年にこども家庭庁が設置された。子どもを持ち育てたいと思う社会を作るために、どのような政策が必要かは非常に重要なテーマだ。しかし、 「気候変動対策として子育て世帯を支援する視点」 は目からウロコだ。考えられる施策には、 ・子育て世帯が立地条件の良い場所に住めるような住宅支援 ・子育てに必要なインフラのアクセス改善 ・環境に優しい移動手段への補助 がある。今回の研究を通じて、欧州の事例と日本の実情を照らし合わせて考察したところ、うのみにできない部分もあったが、貴重な洞察を得ることができた。 住む場所や移動手段は家族構成や経済状況、価値観によって異なるため、考え方は人それぞれだ。地域ごとの状況に応じて、住宅事情や交通インフラを改善していくことが最適解だろう。
タクヤ・ナガタ(ライター)