高齢者への警告…東大医学部卒の医師が世の健康情報に苦言「長生きしたけりゃ肉を食え!」高齢者が1日に必要なタンパク質を摂取するのは大変
株式会社大和ネクスト銀行がビジネスパーソン1000名を対象に実施した「ビジネスパーソンの健康づくりに関する調査2022」によると、「健康づくりのためにしていること」の一位は「なるべく歩いたり階段を使うようにしている」「タバコを吸わない」「外出後は手洗い・うがいをする」 (いずれも37.5%)だったという。 いずれも重要であるものの、健康づくりのカギはやはり食生活にある。 『コレステロールは下げるな』 (幻冬舎新書) などのさまざまな著書で、常識を覆す医学の真実を啓蒙してきた医師の和田秀樹氏に、なぜ高齢者ほどお肉を摂取すべきなのか聞いたーー。みんかぶプレミアム特集「健康情報の本質だけをまとめました」第1回。
高齢者ほどお肉を食べるべき理由
「お肉はなるべく控えた方が良い」と考えておられる方もいるかと思いますが、実は高齢者ほどお肉を積極的に摂取した方が良いのです。 一般的に歳をとるほど、タンパク質はより多く必要になります。 例えば、筋肉量の低下や肌の老化などを防ぐためにも、タンパク質が重要です。 また、タンパク質が不足すると、神経伝達物質のセロトニンが減少して、うつ病にもなりやすくなります。高齢者の約5%がうつ病を発症していると言われていますが、セロトニン不足が原因であることも少なくありません。 セロトニンが不足すると、不安感が強くなるだけではなく、痛みにも敏感になります。腰痛になる要因にもなるのです。 こうしたことを予防するには、高齢者ほどタンパク質を積極的に摂取しなければなりません。お肉は、そのためのタンパク源なのです。
高齢者が1日に必要なタンパク質を摂取するのは大変
タンパク質は、筋肉や肌の内臓の材料になります。高齢者になるにつれて、タンパク質を分解して筋肉にしたり、肌にしたりする能力が落ちていってしまうのです。 一般的にタンパク質は、一日で「体重×1グラム」とると良いと言われています。体重が60キロの人は60グラム、70キロの人は70グラム、ということですね。 ただ、高齢者の場合は、「体重×1.2グラム」になります。つまり、60キロの人は72グラムです。 タンパク質は、お肉100グラムがあったら、概ね20グラムくらい入っています。大体、2割くらいですね。牛乳も、卵も、2割くらいです。 そうなると、60グラムのタンパク質が必要な人は、お肉を1日300グラム取らないといけませんよね。300グラムというと、なかなかの量になりますから、魚や大豆、卵などタンパク質が含まれているいろいろな食材を積極的に摂取しなければならないことがわかるかと思います。その中でも、お肉は重要な食材です。 実際に、日本の高齢者でタンパク質が足りている人は、高齢者全体の4割程度しかいないと言われています。それだけ、必要なタンパク質量を摂取するのは大変なのですね。 著者プロフィール 和田秀樹 精神科医。1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。東京大学医学附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学学校国際フェローを経て、現在は精神科医、ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師、川崎幸病院精神科顧問、国際医療福祉大学教授、和田秀樹こころとからだのクリニック院長。緑鐵受験指導ゼミナール代表。『80 歳の壁』(幻冬舎)、『70 歳が老化の分かれ道』(詩想社)、『六十代と七十代 心と体の整え方』(バジリコ)など著書多数。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。
和田秀樹