三が日は餅を詰まらせて亡くなる高齢者が集中する…予防法と対策をチェック【正月は体に悪い】#2
【正月は体に悪い】#2 1月は食べ物を喉に詰まらせて亡くなる高齢者が多い。厚労省が発表した最新の人口動態統計(2023年)によると、食べ物による窒息死は年間4620人。このうち65歳以上が4215人で、80歳以上だと3000人に上る。 正月に食中毒を起こさない! 「日本食中毒防止協会」専務理事が指摘する対策3原則 喉にモノを詰まらせことによる不慮の窒息死を月別で見ると、1月が11.3%と2位の2月(8.4%)に比べ大幅に多かった。 そのなかで最も気をつけたいのが「餅」だ。消費者庁が2018年から2019年までの2年間を分析したところ、餅による窒息死亡事故の43%が1月に発生していたという。とくに正月三が日に集中し、男性の死亡者数は女性より2.6倍も多かった。愛国学園短期大学部の古谷彰子准教授が言う。 「高齢者が食べ物を喉に詰まらせやすいのは、加齢に伴う噛む力や飲み込む力の低下、唾液の分泌量の減少などが原因です。とくに餅のような粘り気の強い食品を飲み込む際は窒息のリスクが高まるので注意が必要です」 では、餅を詰まらせないためには、食べ方などどのようにしたらよいのか。 「餅は小さく切り、食べやすい大きさにすること。お茶や汁物などを飲み、喉を潤してから食べましょう。そして、ゆっくりとよく噛んでから飲み込むことが大切です」 とはいえ、高齢者のなかには見るからに噛む力、飲み込む力が弱っている人もいる。 「その場合は、豆腐やおからと片栗粉を混ぜて作る『代用餅』がおすすめです。噛み切りやすいので、高齢者はもちろん小さなお子さんがいる家庭では、窒息事故予防につながります」 さらに、餅を柔らかく調理する方法として、お雑煮やみぞれ餅など、水分を多く含む料理と組み合わせることが効果的だ。介護用の餅も販売しているのでチェックするのも良いという。 餅を食べる「時間帯」にも注意したい。 「できるだけ唾液分泌量が多い時間帯に食べてもらうのがいいでしょう。唾液分泌量は個人差が大きいものの、一般的に日中に増加し、夜間に減少する傾向があります」 餅を唾液分泌が多い時間帯である日中に食べることには、いくつかのメリットがあるという。 「まず、唾液が餅を潤滑し、喉をスムーズに通過させることで飲み込みやすさが向上します。また、唾液に含まれる酵素が餅を部分的に分解して食べやすくするため、食事そのものが快適になります」 食事を楽しむ気持ちも唾液分泌を促す大切な要素。「美味しそう」と感じることで唾液腺が刺激され、分泌が増え、飲み込みやすさが向上する。餅を食べる際には、できるだけ会話をしながら楽しく食事を楽しめる環境を整えるのも大切だ。 「高齢者がお餅に限らず食べ物を口にするときは、周りの人がさりげなく観察しているようにしましょう。万が一、餅が喉に詰まった場合の応急手当として、有効とされる『背部叩打法』や『腹部突き上げ法』をネット動画などを見てやり方を覚えておきましょう。緊急時に適切な対応が可能になります」 背部叩打法は、窒息している人の後ろから、手のひらで左右の肩甲骨の中間辺りを力強く何度も叩く方法。腹部突き上げ法は、窒息している人の後ろに回り、ウエスト付近に両手を回す。このとき一方の手で握りこぶしを作って、親指側をへそとみぞおちの中間辺りに当て、もう一方の手で握りこぶしを握る。そして素早く斜め上方に向かって圧迫する方法だ。 正月は家族や友人と過ごす貴重な時間。お餅を安全に楽しむために、これらの点に注意したり、工夫を取り入れ、健康で楽しい新年を迎えよう。