新国立競技場の計画見直し 責任はどこにあるのか? 大杉覚・首都大院教授
下村文科大臣と舛添知事との間で対立が生じた、都が新国立競技場建設(の周辺整備)費用を負担すべきかをめぐる問題についても同様です。下村大臣と前任の都知事とのやりとりは公式的なものでなく、「密室」的な性格の強いものでした。これがもし、文科省やJSCが一定以上の試算結果など根拠を提示して、東京都に対して都民に見える形で公式的に申し入れを行うなど、最初からオープンな議論に付されていたならば、さまざまな問題点が共有され、関連諸団体の議論も進み、様相は一変したでしょう。 新国立競技場整備をめぐる問題は複雑できわめて困難です。だからこそ国民・都民の納得のいく透明性の高い決定プロセスが求められるはずです。五輪をめぐる意思決定のあり方ついても、二度目の開催国としての真価が問われているといえるでしょう。 --------------- 大杉覚(おおすぎ さとる) 首都大学東京大学院社会科学研究科教授。昭和39年生。東京大学大学院総合文化研究科より博士(学術)取得。成城大学法学部専任講師、東京都立大学法学部助教授を経て、平成17年から現職。その間、平成13~14年ジョージタウン大学客員研究員。政策研究大学院大学客員教授。専門分野は行政学・都市行政論。著書に『地方自治』(平成16年、共著、日本放送協会学園)、『自治体組織と人事制度の改革』(平成12年、編著、東京法令出版)、『実践まちづくり読本』(平成20年、共著、公職研)ほか。総務省人材育成等専門家派遣事業アドバイザー、総務省地方公共団体における人事評価制度に関する研究会委員、国・自治体各種審議会等委員を歴任。