吉岡里帆と蓮佛美沙子が被災地・能登での二人芝居「まつとおね」にかける思い
来年3月に上演される吉岡里帆さんと蓮佛美沙子さんによる二人芝居「まつとおね」(石川県七尾市・能登演劇堂)は、地震と豪雨で大きな被害を受けた能登での舞台で、「復興祈念公演」と銘打たれました。ともに戦国武将の妻の役を演じる吉岡さんと蓮佛さんに、舞台にかける思いを聞きました。い 【写真】記者会見で、親指を少し曲げて能登半島の形を表す「能登ポーズ」をとる吉岡里帆さんと蓮佛美沙子さん <まつとおね>戦国動乱の世に天下統一を果たした豊臣秀吉に仕え、加賀(石川)の地を治めた前田利家の妻・まつと、秀吉の妻・おね。固い友情の絆で結ばれ、戦国武将の夫を献身的に支えた二人の女性の生きざまを描く。原作・脚本は、NHK大河ドラマ「天地人」(2009年)、「花燃ゆ」(2015年)などで知られる脚本家の小松江里子さん。演出は歌舞伎俳優の中村歌昇さん。ナレーションは、シンガー・ソングライターの加藤登紀子さん。企画・プロデュースは、七尾市出身の近藤由紀子さん。
吉岡里帆「舞台に全てを注ぎ込む」
――二人芝居に出演するのは今回が初めて? 四人芝居の経験はありますが、二人芝居は初めてです。ただ、私自身、二人芝居をよく見に行っていて、役者さんが相手にだけ集中して演じている感じが面白いなと思って、いつかやってみたいと思っていたんです。だから、出演のオファーをいただいた時は、とてもうれしかったです。 ――演じる二人の空気感が、舞台を支配しますね。 きっと緊張すると思います。責任がより重大ですよね。蓮佛さんを絶対に困らせたくないですし……(笑)。それに、劇場の大きな空間をどうやって二人で埋めるのか、私にとってはチャレンジです。四人芝居に出演した時は、家の中の一室だけで物語が展開していく設定だったけれど、今回は、年月も場所も移り変わっていく設定なので、それを二人だけでどのように見せるのか。「これは難しそうだな」と感じています。 ――脚本を読んで、まつという女性をどう受けとめましたか? 激動の時代の中で、何があっても強く生きていくんだという気持ちがまつさんにはあって、私も励まされる気がしたし、簡単には心が折れないところに共感しました。 ――最近は、テレビドラマや映画など映像のお仕事が多いと思いますが、演劇への思いは? 小劇場でのお芝居から(俳優業を)スタートしたこともあって、演劇のお仕事は思い入れが強いです。映像だと、見てくださるお客さんと役者は直接つながれませんが、演劇は、劇場に足を運んでくださって目の前にいるお客さんのためだけに演じる。役者としてすごくシンプルでピュアなことだけれど、一番緊張することでもあります。 ――その日その日でお客さんの反応も異なると思います。 お客さんが作ってくださる空気によって、お芝居が変わったりもします。そういう“生もの”としての舞台の面白さは、実際に見ていただいて初めて分かるものかもしれません。来年から大河ドラマ(「豊臣兄弟!」)の撮影が始まるので、舞台のお仕事はしばらくできなくなりそうですが、その分、今回の「まつとおね」に私の全てを注ぎ込んで、舞台への思いをぶつけたいです。 ――1月の地震で、能登演劇堂も照明などが損壊して公演が開けなくなりましたが、修繕が進んで、「まつとおね」で公演が再開されることになります。プレッシャーは感じませんか? もちろん、たいへん感じています。石川県の皆さんが「やってもらって本当に良かった」「素晴らしいものを見た」と思ってくださるよう頑張らないといけないなと今から緊張しています。 ――県外からも大勢の人が訪れると思います。 9月に七尾を訪れた時、地元の方々が「能登に来てもらうことに意味がある」とおっしゃっていて、私もそれが復興のためにとても大事なことだと思っています。まずは能登に関心を持ってもらって、能登を訪れたら、買い物をしたり、食事をしたり、能登演劇堂で観劇を楽しんでもらったり。すごく良い一日になるんじゃないかと思います。 ――多忙な日々のなかで、気分転換のために実践していることはありますか? サウナに行きます。最近は、カフェみたいな雰囲気のおしゃれなサウナもあって、そういうところで体を温めています。それと、家に植物をたくさん置いて、お手入れしながら癒やしをもらっています。ゼラニウム、レモン、オリーブ、ローズマリーなどなど、いっぱいあるんですよ。