吉岡里帆と蓮佛美沙子が被災地・能登での二人芝居「まつとおね」にかける思い
蓮佛美沙子「感情のグラデーション表現したい」
――出演オファーを受けた時、どんなことを考えましたか? 能登半島地震からの復興を祈念する作品ということで、「すごく光栄だな」と思ったのと同時に、「上演していいのだろうか」という葛藤もありました。その時は地震からそれほど日もたっていなかったですし。 ただ、いろんな人にお話をうかがう中で、被災地に「エンターテインメントが生きる活力になる」と言ってくださる方がいると聞いて、その声は決して無視できないなと。能登にそう言ってくださる方が一人でもいらっしゃるのなら、その思いに寄り添って、応えられるように頑張りたいなと。 もちろん、地震や大雨の被害がより大きかった奥能登には、演劇どころではないという方々がいらっしゃることも忘れてはいけないと思っていますし、別の方法で支援を続けていきたいと思っています。 ――蓮佛さんにとって演劇とはどういう存在なのでしょう? 演劇は、役者として特に鍛えられる、成長できる場所だと認識しているんです。例えば1か月間の公演だとしたら、同じコンディションを1か月間保つ必要があります。体調が思わしくないなら、「その時にできる100%の力」を模索して演じなくてはいけません。それに、映像のお芝居だったら、「もう1回やらせてください」とお願いして撮り直したり、後でうまく編集してもらったりできるけれど、舞台は“生もの”だから、それができない。演劇のお仕事は、より緊張感をもって臨まなければならない分、役者として鍛えられると思っています。 ――脚本を読んで、おねにはどんな印象を抱きましたか? 感情の発露が鮮やかというか、思ったことを素直に表現できる女性なのかな。歴史の書物を読んで勉強してみても、そんなふうに書かれているものが多いんですよ。朗らかな性格だったおねが、時代に翻弄されていくなかで、「鬼」になっていきます。そんな感情のグラデーションをきちんと表現したいです。 ――「まつとおね」は時代劇で、なおかつ二人芝居です。これまで経験した舞台とはかなり毛色が違いますね。 演出が中村歌昇さんで、歌舞伎の要素が入るという意味でも、私にとっては全く未知の世界です。今まで経験してきた舞台だと、役者さんが大勢いて、舞台からいったんさがる時間が休憩ポイントだったりしますが、今回は二人だけの会話劇なので、舞台上でずっとしゃべり続けるんです。役者としてお芝居の世界に没入できるので、ふだんとは違う感覚に入り込めるんじゃないかという期待がある一方で、お客さまにもお芝居に没入し続けていただかなくてはならないので、緊張も今から感じています。 ――吉岡さんとは初共演ですね。どんな印象ですか? テレビで拝見していた通りの華やかさ、穏やかさと同時に、彼女の目の奧にある「強さ」を感じました。役者の道を頑張って歩んできたからこそ得られた「強さ」なんだろうな、まつ役にぴったりだなと。 ――二人芝居のパートナーとしては心強い? 心強いですね。彼女の方が年下だけど、「ついていこう!」と思いました(笑)。 ――公演で七尾に滞在している間、楽しみにしていることは? 里帆ちゃんが、すごくおいしいおすし屋さんに行ってきたそうなんです。「一緒に行こう」と言ってくれているので、私もおいしいものを食べたいですね。同時に、能登の現状をしっかり見ていきたいとも考えています。 ――仕事以外に最近、関心を抱いていることはありますか? 健康です(笑)。共演者や知り合いと「この蜂蜜がいいよ」などと情報交換をし合って、体に良いものを取り入れるようにしています。漢方を取り入れ始めたら、自分で体が変わってくるのが分かって、今すごく夢中になっているんです。健康を保って、「まつとおね」を最後までやりきれたらと思っています。 (読売新聞文化部 武田実沙子、メディア局 田中昌義) 【公演情報】 「まつとおね」 ◇期間 2025年3月5日~23日 ◇場所 能登演劇堂(石川県七尾市) ◇出演 吉岡里帆、蓮佛美沙子 ◇ナレーション 加藤登紀子 ◇原作・脚本 小松江里子 ◇演出 中村歌昇 ◇音楽 大島ミチル ◇企画・キャスティング・プロデュース 近藤由紀子 ◇主催 公益財団法人演劇のまち振興事業団 ◇チケット料金 前売り7700円、当日8200円、障がい者5500円、18歳以下(小学生~満18歳まで)無料、18歳以下の同伴者3850円=いずれも税込み