【マイルCS】本命候補は富士Sから巻き返しを狙う外枠2頭 穴馬は復調気配のマテンロウスカイ
本命は馬場次第 穴馬はマテンロウスカイ
【アルナシーム】 今夏の中京記念(小倉芝1800m)で初重賞制覇を達成した馬。同レースは2番枠からまずまずのスタートを切ったが、促してもあまり進んで行かず中団中目からの追走。道中はテーオーシリウスとセオが競り合い縦長の展開になったが、中団の最内で我慢して3角へ。 3~4角ではじわっと仕掛けてエルトンバローズの後ろを走り、その外2列目から直線へ。直線序盤で並ぶ間もなくすっと先頭に立ちクビ差ほど前に出ると、ラスト1Fでしぶとく伸び、内から食らいつくエピファニーを振り切ってクビ差で勝利した。 今夏の小倉は梅雨の影響を強く受け、開催8日目で行われた中京記念当日は、雨の降る時間帯もあってタフな馬場だった。 そのうえ前2頭が競り合い消耗戦となり、前へ行った馬には不利な展開だった。しかし、昨年の毎日王冠の勝ち馬で、今年は同レース3着のエルトンバローズを撃破しているように、それなりのレベルにあった。 前走の富士Sは6着に敗れたが、消耗戦で好走した疲れを取ることに専念した休養明けの一戦。能力を出し切れる状態ではなかった面がある。それでも12番枠から好位の中目を追走としっかりポジションを取り、最後の直線で前が壁になって仕掛けが遅れる不利がありならも、4着と0.1秒差だった。 本馬はあふれる前進気勢が出世を遅らせたが、エプソムC以降は折り合うことができている。ただ、タフな馬場でこそのタイプ。レース当日、予報どおりに雨が降れば本命の可能性もあるが、最終決断は当日の馬場を見てからにしたい。 【セリフォス】 2022年の3歳春で挑んだ安田記念で4着。同年秋に富士Sと阪神芝1600mで行われたマイルCSを連勝。早期から活躍していた素質馬だ。 2022年のマイルCSは、10番枠から五分のスタートを切り、促されて中団中目を追走。ただ序盤のペースがやや遅く、団子状態だったため位置が下がって後方追走となった。 3~4角では中団の中目の馬たちが包まれていたが、4角出口で外に誘導。直線序盤の伸びは地味で中団に取りつくまでだったが、ラスト1Fで一気に前を捉えて1馬身1/4差で完勝した。 このときは時計の掛かる外差し有利の馬場で、先行勢がラスト1Fで甘くなったことや、差し勢の中では比較的スムーズに運べていたことが好走要因だが、スピードが乗ってからの末脚は確かなものがあった。 昨春の安田記念は2着。その後に夏負けした影響で秋の富士Sを回避。調整が狂ってしまい昨秋のマイルCSは8着、香港マイルも7着に敗れた。ただそこから立て直した3走前のマイラーズCでは2着だった。 3走前は3番枠を利して中団最内を上手く立ち回るも、口向きの悪さや直線序盤で詰まる場面がありながらも2着に善戦、復調気配を感じさせた。前々走の安田記念は、休養明けで好走した後の5着敗戦で仕方ないものがあった。しかし前走の富士Sでも4着というのは…。 衰えたのかもしれないと思ったが、レースは出遅れ終始内にモタれ、かなり折り合いを欠いて頭を上げていた。また3~4角で包まれ最後の直線で仕掛けが遅れていた。 ラスト1Fでもさほど伸びておらず、仕掛け遅れ自体はそこまで影響がなかったと見ている。ただ酷く折り合いを欠いていたこともあり、能力を出し切ったものではないだろう。 前走で前に壁を作っても折り合えないレースぶりを見ると、馬場がタフになったときはスタミナに不安が残る。ただ良馬場である程度レースが流れれば、巻き返しの可能性は十分ある。本馬も馬場次第で本命候補だ。 【マテンロウスカイ】 今春の中山記念の勝ち馬。同レースは8番枠からまずまずのスタートを切り、しっかり先行。ハナをうかがいながら好位の最内3番手を確保した。道中では逃げるドーブネとのスペースを広げて3角へ。3~4角でドーブネとの差をじわっと詰め、4角で同馬の外に誘導。直線序盤で並びかけると、ラスト1Fで抜け出し2馬身差で完勝した。 後の札幌記念2着馬ジオグリフや宝塚記念2着馬ソールオリエンスに先着したように、かなり強い内容で自己最高指数を記録。中山記念はタフな馬場でラスト5F目(向上面半ばから3角にかけて)が最速の消耗戦だった。 この内容だけを見ると「タフな馬場の消耗戦でこそ」と感じさせるが、前走の超高速馬場だった天皇賞(秋)でも、好位の最内で折り合いを欠く場面がありながらも5着に善戦。高速適性はある。また昨年暮れのリゲルSは2番手からすっと抜け出し勝利しているように、マイル実績もある。 3走前のドバイターフは、中山記念で自己最高指数を記録した後の一戦。疲れ残りの海外遠征で大幅に馬体を減らした。そんな中で折り合い欠きながら逃げて15着に大敗。前々走の毎日王冠は出遅れて中団最内を追走と無難に乗ったが、最後まで進路がなく、追うこともできず8着に敗れた。 ベストは芝1800mだが、折り合いを考えるなら極端なペースにはならないこの舞台は合っている。前走で復調を見せているだけに、ここでさらなる前進に期待したい。 ※パワーポイント指数(PP指数)とは? ●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示 例)ソウルラッシュの前走指数「-23」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.3秒速い ●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート ●能力値 =(前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3 ●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数 能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補 ライタープロフィール 山崎エリカ 類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
山崎エリカ