もうすぐ65で定年ですが住宅ローンが70歳まで残っています。退職金で完済しようと考えていたのですが「やめたほうがいい」と言われました。どうしたらよいですか?
住宅ローンを退職金で完済しようと考える人もいます。しかし、退職金の多くを使って返済することはリスクにもなりえるため、注意が必要です。 本記事では、住宅ローンを退職金で返済してもよいのかについて、リスクを含め解説します。60歳代、70歳代の人の住宅ローン残高や退職金額のほか、退職金以外で返済する際のポイントについても触れているため、参考にしてください。 ▼住宅ローンは「繰上げ返済」すべき? メリットについて解説
退職後の住宅ローン事情
60歳以降でも多額の住宅ローンが残っているケースもあり、退職金で住宅ローンの返済をしようと考える人もいます。 では、具体的に60歳代、70歳代でどれくらいの住宅ローンが残っているでしょうか。金融広報委員会の「令和4年度 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」から、図表1で見ていきましょう。
※金融広報委員会「令和4年度 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」より筆者作成 60歳代では、住宅ローン残高が2000万円以上ある世帯が15%もあることが分かりました。70歳代では2000万円以上の割合が大きく減ることから、退職金による住宅ローン返済をしている人がいるとも言えるでしょう。
受け取れる退職金額
退職金をいくら受け取れるか、中央労働委員会「令和5年 賃金事情等総合調査」をもとに見ていきましょう。 ・大卒事務・技術職(総合職)で定年まで勤めた場合……2858万4000円 ・高卒事務・技術職(総合職)で定年まで勤めた場合……2162万5000円 住宅ローンの返済に充ててしまうと、老後に残るお金がなくなってしまう可能性があるでしょう。
退職金で住宅ローン返済はやめたほうがよいのか
退職金を住宅ローン返済に充てると、その後の生活に影響が出る恐れがあるため注意が必要です。 生命保険文化センター「リスクに備えるための生活設計」によると、夫婦二人で老後生活を送る際に必要な費用は、月額平均23万2000円です。 日本年金機構「令和6年4月分からの年金額等について」によると、夫婦二人で受け取れる厚生年金の標準的な年金額は23万483円と、老後生活を送る上で必要な生活費を下回っていると分かりました。 厚生年金のみでは、最低限の生活しかできない可能性があります。もし退職金の多くを使って住宅ローンを返済してしまうと、病気をしたり家を修繕したりなどする場合に対処できない可能性が生じるでしょう。