ワゴンだけになったVW新型「パサート」は“広い後席&荷室”が最大の武器! 乗り心地と安定感と軽快感がハイレベルの走りは驚愕です
ステーションワゴンに一本化された新型「パサート」
VW(フォルクスワーゲン)は“ドイツのトヨタ”といった印象の総合自動車メーカーであり、コンパクトハッチバックの「ゴルフ」がラインナップの中心的存在となっています。 【画像】「えっ!…」ワゴンに求められる要素がギュッと詰まった! これがVWの新型「パサート」です(30枚以上)
本記事でフォーカスする「パサート」は、そんな「ゴルフ」より“ひとクラス上”のモデル。「ゴルフ」がトヨタ「カローラ」やホンダ「シビック」だとすれば、「パサート」はトヨタ「カムリ」やホンダ「アコード」のようなポジショニングといえるでしょう。 そんな「パサート」がフルモデルチェンジを経て7世代目へ進化したのですが、新型には大きなサプライズがありました。なんと、これまでラインナップの基本だったセダンが廃止され、ステーションワゴンへと一本化されたのです。 「パサート」は1973年に誕生した初代モデルから一貫して、セダンとワゴンというふたつのボディをラインナップしてきました。しかし新型は、ワゴン専用車へと華麗に転身。それは「パサート」の歴史において、とてつもなく大きな変化といえるでしょう。 その理由は、きっと多くの人がイメージできるに違いありません。そう、世の中の“セダン離れ”です。 かつて乗用車の中心だったセダンには、重心の低さからくる良好な運動性能といったアドバンテージがあります。しかし、いかんせんミニバンやSUVに比べるとセダンは利便性に劣り、しかも昨今は、ミニバンやSUVの走行性能が高まってきたこともあり、セダンはトレンドから外れてしまっているのが現状です。 そうした状況を受け、「パサート」はセダンを止めてワゴンだけで生きていく方向にシフトしたというわけです。 実は、超高速移動が可能な高速道路とバカンスによる長期休暇があるドイツでは、クルマに荷物を満載して高速道路をかっ飛ばし、長距離移動するという使い方もまだまだ一般的。そんなシーンに適したクルマの代表格がワゴンなのです。 昨今、多くのユーザーがSUVを好んでいるのはドイツも日本も同様ですが、なかには「SUVは好まない。やはりクルマは背が低くないと」という人もまだまだ多くいて、ワゴンはそういうこだわり派の受け皿にもなっている現状があります。 実は日本でも、メルセデス・ベンツやアウディなどでセダンとワゴンの双方をラインナップするモデルでは、後者を選ぶ人が多いといいます。 それは、荷物をたくさん積めるパッケージングでありながら、セダンと同じ感覚でドライブできるという美点を重視しての選択といっていいでしょう。ドイツも日本もワゴンを選ぶ人の考えは同じなのです。 今回、セダンを廃止してワゴン専用モデルとなった「パサート」のねらいは、脱セダン時代におけるSUVとの共存にあるといっていいでしょう。 ●ワゴンでトップクラスの荷室容量を確保 さて、そんな新型「パサート」の第一印象は、なんといっても「流麗なスタイリングだなぁ」というものです。 先代は凛とした格調の高さを感じる、アッパークラスらしいプレミアムな仕立てが特徴でしたが、新型は方向性を大きく転換。丸みを帯びたスポーティで伸びやかなルックスとなっています。 全長は、先代より145mm長い4915mmとなるなど、ボディサイズはかなり大型化。これはひと昔前のフルサイズモデル級の数値で、それがキャビンのゆとりにつながっています。特にリアシート乗員のヒザ前スペースは驚きの広さで、ラゲッジスペースも広大です。 一方、全幅は1850mm、全高は1500mmにとどめている点は、機体式立体駐車場の利用者にも歓迎されることでしょう。 ところで、筆者(工藤貴宏)は同クラスのSUVに対するワゴンのアドバンテージは、ラゲッジスペースの床面積が広いことだと考えます。 同じクラスのSUVと比べてリアのオーバーハングが長い傾向にあるワゴンは、荷室の前後長が長く確保されているものが多く、高さ方向で荷室容量を稼ぐSUVに対し、床面積で容量を稼いでいるといっても過言ではありません。 荷物を積み上げて積むのと、広いフロアいっぱいに積み込むのとでは、後者の方が便利なのはいうまでもないでしょう。ワゴンを好む人の中には、そういったSUVにないメリットを求めている人も多く存在します。 いずれにせよ、新型「パサート」の690リットルという後席使用時の荷室容量はワゴンの中でもトップクラス。リアゲートの開閉に合わせてカラクリ仕掛けで自動開閉するトノカバーなど、利便性を高める装備も充実しています。