JR東日本や戸田建設で「オフィスビルに芸術文化」の新潮流 体験を提供することで不動産価値向上の手段に
芸術や文化の要素を取り入れて不動産価値を向上させる動きが、都内で本格化している。 【写真】戸田建設の新本社ビルには現代アートを堪能できるギャラリーや企業文化を伝えるミュージアムがある JR東日本は10月30日、高輪ゲートウェイ駅(東京港区)に直結する「TAKANAWA GATEWAY CITY」(高輪ゲートウェイシティ)を2025年3月に「まちびらき」すると発表した。 都内最大級の複合エリアであるこの施設は、オフィス、商業施設など多様な要素で構成され、ビジネスワーカーや外国人にも対応した高層住宅も備えている。高輪は日本の「鉄道発祥の地」ともされ、JR東の喜勢陽一社長は「150年前にイノベーションが生まれた地で、新たな価値を創出する」とする。
高層のオフィス棟など5つの施設が並ぶ高輪ゲートウェイシティの中でひときわ目を引くのが、地上6階、高さ45メートルと低層の文化創造棟だ。正式名称は「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」と決まり、2026年春に開館予定だ。 ■イベントスペースに約100畳の畳 MoNはパブリックビューイングなどのイベントも行われる大規模な展示ホール、約100畳の畳スペースを備えたイベントスペース、そしてお月見など季節の行事を楽しめるテラス・足場を備えている。
JR東日本文化創造財団の内田まほろ開館準備室室長は、「江戸の人々が文化を楽しむ風景を現代に再現し、アート、サイエンス、エンターテインメント、伝統文化などを融合したプログラムを提供する」と述べる。芸術と文化を通じて、地域に新たな価値を生み出そうとしているわけだ。 また、エリア全体では駅の施設と街が持つデータを連携させることによるサービスの提供や、ビルイン型バイオガス設備の導入など環境配慮型の取り組みも行われている。
オフィス棟の賃料は「周辺エリアよりも高い水準で推移し、需要は非常に好調だ」(JR東マーケティング本部まちづくり部門の天内義也マネージャー)という。 芸術や文化を新オフィスビルの「売り」にする企業は、JR東だけではない。 準大手ゼネコンの戸田建設は11月2日、新本社ビル「TODA BUILDING」を東京中央区京橋に開業した。このビルは高さ165メートルで、地下3階、地上28階建て。 新本社ビルを内覧したある準大手ゼネコンの首脳は、「すごいな。(同じ京橋地区にある)スーパーゼネコン・清水建設の本社ビルを見下ろす高さだ」と驚きの声を上げた。