性的被害を受けた米国女性たちが声を挙げる #MeToo はなぜ巨大化したのか
リベラル派は支持で保守派は無視?
反トランプを叫ぶ団体が集会を仕切っていたわけでも、圧倒していたわけでもなく、そこには確かに主催者の2人や里内さんのようなサバイバー、そして純粋な#MeTooムーブメントの支持者がたくさんいました。ただ、トランプホテルの正面が会場に選ばれたことにも象徴されるように、米社会の変革を望むサバイバー女性たちの勇気からはじまったセクハラ・性暴力告発の動きが、政治という大きなうねりに巻き込まれて本来の意義を失ってしまうという、ある種の危うさみたいなものが漂っていたように思います。 友人同士でこのムーブメントについて話していた時、あるアメリカ人男性が、(以下長い会話をまとめると)「女性差別、蔑視、偏見という歴史的問題に、せっかく社会が真摯に向き合い始めたと思ったら、あっという間にリベラル派と保守派に分かれた政治的問題になってしまった。トランプ大統領になって、これ以上ないほど分断されてしまった米社会が、さらに右と左に分断される材料として利用されるだけになる気がする。社会が連帯して立ち向かえるユニバーサルな問題のはずだったのに、すごく残念だ」と言っていました。 アラバマ州上院議員の補欠選挙に出馬していた共和党のロイ・ムーア候補者が、過去に未成年の少女たちにわいせつ行為を働いていたと、被害者たちが次々とメディアに告発しました。ところが共和党の反応は鈍く、大統領に至っては積極的に支持を表明。一方、野党民主党は大批判キャンペーンを展開し、結果的には超保守が鉄板のアラバマ州で民主党候補が勝つという大どんでん返しが起きています。 一方民主党も、ミネソタ州の有力な上院議員アル・フランケン氏にセクハラ疑惑が浮上。前身のコメディアン時代のセクハラ疑惑が出た当初は、氏が謝罪した上に米議会倫理委員会の調査に協力すると述べていたために非難を控えていた身内の民主党も、6人目の告発者が出たところでニューヨーク州選出の女性上院議員キルステン・ジルブランド氏が「もう十分」と辞任を要求。民主党の重鎮ほかがこれに続いたため、フランケン氏は辞任発表に追い込まれました。