性的被害を受けた米国女性たちが声を挙げる #MeToo はなぜ巨大化したのか
#MeTooは政治の問題なのか
実際に参加してみてどう感じたか聞いてみると、「……反トランプですよね、かなり」。確かに「反トランプ」色が非常に強い。里内さんの背後に写っている「WANTED」と書かれたプラカードもトランプ・ペンス・ムーアが三つ巴のビジュアルです。 ペンス副大統領はキリスト教福音派(の非教派)として、女性の「人工妊娠中絶を選ぶ」権利を否定する人物。フェミニスト運動の敵のような位置にいます。今回の集会にも「NYC for Abortion Rights(中絶を選ぶ権利のためのニューヨーク)」と大きく書かれた横断幕を掲げる女性二人組がいました。熱心に新聞を配り、一番目立つ一連のボードを掲げていた団体の主張は「The Trump/Pence Regime Must Go!」。通常、「Regime」は独裁的あるいは軍事的な政府や権威主義体制に使われる言葉で、米国のような民主主義国家の政府には「Administration(政権)」が一般的ですから、これだけでもかなり強烈な政治的メッセージが含まれているといえます。 一方で主催者のひとりVasquezさんは、「今日という日はドナルド・トランプについてではなく、それをずっと超えたところにある問題についてなのです」と言います。女性に対する暴力や男女間に横たわるパワーバランスの問題は、確かに一大統領のそれよりもずっと根が深く、古来、気の遠くなるほど長く続いてきたものです。 里内さんに、次もこういう機会があったら集会に参加するか聞いてみました。「ここでやらずにいつやるという思いで参加したけれど、もう行かないと思います」。政治ではなく個人の意識を変えることが、社会全体へのムーブメントにつながるのではないか、と考えているそうです。 「#MeTooムーブメントが起こり、女性の歴史が大きく癒されつつあるのかもしれません。そこで私は表現者として、母として、私なりに女性のエンパワメントに関わっていきたいんです。日本の女性も、従来の社会の枠に捕われなくなった時、告発できる力を持てるようになり、自分自身をいたわれるようなる。そしてそれらが受け入れられ、守られる社会へと変わっていくようお手伝いをしていきたいと思います。」