性的被害を受けた米国女性たちが声を挙げる #MeToo はなぜ巨大化したのか
米国で起きた性的被害を受けた女性たちが声を挙げる「#MeToo」は短期間に世界中へと広がりました。告発された男性たちは、次々辞任に追い込まれています。一方で運動が巨大化するにつれて、政治の要素が強まってきたことの懸念や、「魔女狩り」「女性進出を妨げる」という批判の声が出始めています。 #MeTooがどんな影響力を持つようになり、何が問題になってきたのか。ニューヨークブルックリン在住のライター金子毎子さんの報告です。 ----------
今月の初めに米誌タイムが、毎年恒例の「パーソン・オブ・ザ・イヤー(今年の人)」に「サイレンス・ブレーカー(沈黙を破った人びと)」を選んだと発表したことは日本でも大きく報道されました。 10月に米映画界の大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン氏によるセクハラ・性暴力疑惑が報道されるやいなや、被害者が氏のセクハラ・性暴力を次々と告発したことで、あっという間に米国内のみならず、日本や世界各地に広がっていった性被害の告発ムーブメント。これまでの流れと米国の現在の状況について報告します。
すでに風は吹きはじめていた
10月5日にニューヨークタイムズ紙とニューヨーカー誌がそれぞれワインスタイン氏のセクハラ・性暴力疑惑を報道。これに続いた同氏をめぐる告発は収束するどころか拡大の一途をたどり……その後は有名俳優を含むその他の映画関係者や大企業の幹部、ニュース界、はては政界にまで波及していったのは周知の通りです。 しかしその前から少しずつ、風は吹きはじめていました。まずは、女性蔑視・差別発言を繰り返し、3人の女性からセクハラ告発されていたドナルド・トランプ氏の大統領就任式翌日の1月21日に、世界各地600超の都市で「女性の権利デモ」が開催され、500万人近くが参加。米国でも史上最大級のデモとなりました。 4月に、保守系フォックスニュースの人気No.1の名物キャスター、ビル・オライリー氏が、ずっと以前から報じられていたセクハラ関連スキャンダルでついに解雇されます。8月には歌手のテイラー・スウィフトさんがセクハラ訴訟で1ドルの賠償金を勝ち取り、泣き寝入りしない姿勢を強くアピールしました。 ワインスタイン報道から約10日後に、女優のアリッサ・ミラノさんがFacebookとTwitterで、「セクハラや性暴力の被害を受けた経験をこのハッシュタグで共有して」と呼びかけ、#MeTooムーブメントに火がつきました。実はこのムーブメント、「Just Be Inc」の創設者タラナ・バークさんが自ら経験した性暴力の後、2006年に始めた草の根運動がその始まりです。 セクハラや性暴力のサバイバーに「あなたはひとりじゃない」と語りかけ、ともに癒され連帯しようという呼びかけが、その後たちまち米国から世界各地に広がっていく様を、私たちはこのわずか2カ月ほどという短期間に目撃しました。そして告発者もまだ告発できないでいる人も含めて、タイム誌の「今年の人」に選ばれるまでに至ったのです。