子どもの「海外体験」を買う富裕層、「近所のお祭り」すら行けない低所得層…体験格差は親の自己責任か?
● お金のかかる「旅行・観光」は 親の所得が低ければ体験ゼロ 次は「文化的体験」の領域における体験格差の現状を確認していく。その中でも比較的お金がかかりやすいと考えられる「旅行・観光」と、お金がかかりにくい「地域の行事・お祭り・イベント」という2つの「体験」に注目してみたい。 まずは「旅行・観光」だ。予想通りというべきか、やはり世帯年収ごとに子どもの参加率に2倍近くの大きな差があることがわかった(グラフ14)。世帯年収600万円以上の家庭で42.8%、300万円未満の家庭で23.2%となっている。 旅行には様々な費用がかかる。交通費、宿泊費、滞在中の食費、お土産代。家族の人数や日数、旅行先にもよるが、特に泊まりの旅行の場合は数万円、数十万円というまとまったお金が必要になってくる。海外旅行ともなればなおさらで、私たちが支援してきた子どもたちの多くにとってはいまだ縁のない体験だ。 私たちがかつて塾代を支援し、現在はすでに大人になっている男性は次のように話す。彼が子どもの頃は生活保護を受給していたという。 お出かけとか旅行とか、基本何もなかった。保護を受けているときはどこにも行かないし。
● 「体験」を海外に求める 高所得家庭の子どもたち こうした現実が広く存在する一方で、中高生向けのスタディツアーを企画・運営する団体の方からはこんなお話も聞いた。この社会にあるまた別の現実だろう。 これ自体は悪いことではないですが、お金のある家庭が、子どもの体験や経験を「買いにきている」と感じることは多いです。東南アジアでスタディツアーを行った際、航空機代が値上がりしていることもあり、参加費が30万円と高額な設定になりました。それにもかかわらず多くの申し込みがありましたし、なかにはご兄弟ご姉妹で申し込んだ家庭もありました。 子どもが海外も含めた色々な場所に行き、普段とは違った経験をする。そこには娯楽的な側面と教育的な側面の両方があるだろう。 昨今、学力だけでなく、学生時代の活動や経験も重視される入試制度が広がりつつある。そんな中、保護者は、我が子にできるだけ多くの「体験」の機会を提供しようと考える。だが、それをすることができる親は、実際にはかなり限られているのだ。 ● 近所のお祭りへの参加 そこにも所得格差が 遠くの旅行や観光の機会に家庭の経済力の差が出やすいことは想像しやすい。では、近所のお祭りやイベントごとだとどうだろうか。