子どもの「海外体験」を買う富裕層、「近所のお祭り」すら行けない低所得層…体験格差は親の自己責任か?
● 都市部の比較的裕福な家庭が 自然体験に積極支出している 自然体験への参加率ではなく、実際に支出している金額を見ると、都市部のほうが地方よりも高くなっている。旅行会社やNPOなどが提供する自然体験プログラムの価格の違い、あるいは山や海などへの距離に起因する旅費や宿泊費の違いなどが影響している可能性がある。 世帯年収別に自然体験への年間支出額を見ると、都市部に住む年収600万円以上の家庭だけが平均1万円を超えており(1万8000円超)、ほかに比べて突出して自然体験への支出額が大きいことがわかった(グラフ13)。 子どもに自然体験の機会を与えることにどこまでの価値を感じ、そこにどこまでのお金を払うか(払えるか)には、それぞれの家庭によって大きな違いがあるだろう。 全国各地の自然学校やアウトドア関係者が加盟する一般社団法人日本アウトドアネットワーク事務局長で「みんなのアウトドア」代表の原田順一氏は、かつて自身が関わった子ども向けのプログラムについて次のように話す。 以前、毎週のように子ども向けキャンプを実施していたことがありますが、参加者のほとんどは都内在住の子どもたち。日帰りで8000円前後、宿泊だと一泊あたり2万円前後かかるプログラムでしたが、きょうだいで毎週のように参加する子もいて、その多くは私立の学校に通っているような、比較的裕福な家庭の子どもたちでした。
● 誰にでも開かれている山や海での 体験ですら親の所得に左右される こうした話は自然体験の分野で活動するほかの団体の方からもよく聞くものだ。都市部の世帯年収600万円以上の家庭で自然体験への年間支出額が特に大きいという今回の調査結果とも符合する。また、一口に600万円以上と言ってもその中での幅はとても大きく、より高所得の家庭ほどそうした傾向が強く出ている可能性は高いだろう。 逆に、世帯年収300万円未満の家庭が、月に10万円台から多くても20万円前後の可処分所得をやりくりし、毎週1万円近く払って子どもをキャンプに参加させるなど現実的に不可能だ。 魚釣りをやりたがっていますが、私に知識・経験がないため、また金銭的余裕もないため、させてあげられていません。(熊本県/小学1年生保護者) 自然の雪との戯れを体験させてあげたかったが、時間とお金の余裕が無かった。(兵庫県/小学1年生保護者) 山や海は基本的に誰にでも開かれている。入場料がかからない場合がほとんどだ。だが、現実的には家庭の状況の違いが、子どもたち1人ひとりがどんな「体験」をするか、小学生の間にどれほどの「体験」ができるかに大きく関係している。