アメリカの「QE3」とは? なぜ注目?/木暮太一のやさしいニュース解説
新興国の景気が悪くなる
簡単に言うと、「これまで貸したお金を、早く返してください」と言われることになります。だから投資家も、新興国に投資していたお金を引き上げて、返さなければいけなくなります。 その結果、新興国にあふれていた資金がなくなり、新興国の企業は「資金不足」に直面することになります。当然、景気は悪くなります。 現に、新興国からお金が引き上げられ、その影響で新興国通貨がどんどん売られ、安くなっています。 「なるほど、それは大変だ」 QE3はいつか終わりにしなければいけません。しかし終わりにすると、新興国経済、さらには世界経済を悪化させる懸念があります。できるだけ悪影響が出ないように「軟着陸」させる必要があります。 いきなり終わらせるのではなく、徐々に徐々に、各方面、各国への影響を考慮しながら、終了させていかなければいけません。 QE3はアメリカの経済政策で、アメリカ経済のことを考えてスタートしました。しかし、その影響はアメリカ国内にとどまっていません。新興国経済には直接的に、そして新興国を市場として考えている先進国経済も間接的に影響を受けます。 アメリカの経済政策とはいえ、アメリカの都合だけで勝手に決められては困るのです。
9月17-18日が「終わりの始まり」か
「で、このQE3はいつ終わるの?」 市場では、「そろそろ終わらせるのでは?」という予測が立っています。アメリカの経済が上向いてきていますし、雇用数も伸びています。そのため、終わりが近づいていると感じ、今月9月17日、18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で“終わりの始まり”が決まると予想している人が多いようです。 ただ、まだまだ決定ではありません。 つい先日(9月6日)出されたアメリカの雇用統計が芳しくなかったため、状況が変わり始めています。雇用者数自体は増えているものの、非正規雇用が増えていたり、そもそも働く意欲を失っている人が増えていたりと、必ずしも雇用環境が改善しているとはいえません。そのため、専門家の間でも「“終わりの始まり”時期」は意見がわかれ始めています。 いずれにしても、このQE3はアメリカ以外にも大きな影響を及ぼしています。私たちもこの政策を他人事と考えず、「いつ終わるか、自分たちの経済にはどのような影響が出そうか」に注目していかなければいけません。 ----- 木暮 太一(こぐれ・たいち) 経済ジャーナリスト、(社)教育コミュニケーション協会代表理事。相手の目線に立った伝え方が、「実務経験者ならでは」と各方面から高評を博し、現在では、企業・大学などで多くの講演活動を行っている。『今までで一番やさしい経済の教科書』、『カイジ「命より重い!」お金の話』など著書36冊、累計80万部。最新刊は『伝え方の教科書』。QE3とは?