大阪「障がい者にやさしい街づくり」に情熱を注ぐ起業家の生き方
障がい者にやさしい街づくりに情熱を注ぐ起業家がいる。「Lean on Me」(大阪府高槻市)の志村駿介社長だ。障がい者支援事業を行う同社は、障がい福祉サービス従事者がスマートフォンやパソコンを利用して安全面や法律などを体系的に学べる「eラーニング研修」を行っている。この事業は大阪府のビジネスプランコンテストで受賞し、社会的にも評価を受けているが、起業のきっかけは障がい者の支援レベルが高いとされているアメリカのオレゴン州に渡り、その実態を知ったことだった。 雇われるだけじゃない。寝たきり社長が語る「障がい者が起業できる社会」
「起業する前は障がい者支援施設に勤めていまして、その時マニュアルと研修の重要性に気づいたんです。大阪府内外の施設を見学したところ、そのどちらも実現できているところは非常に少なかった。それで、その実現のため効果的なeラーニングに行き着きました」と、志村さんは語る。折しも、オレゴン州が障がい者支援先進地域であると聞き、2015年に1か月の見学を実施。現地で運用されている体系的な教育方針を知り、それを日本でも普及させたいと考えた。 「アメリカに行った時、現地で働く支援者たちに研修内容を教えてもらい、やっている内容のレベルがすごく高いことに驚きました。僕の弟はダウン症なんですが、そういう背景もあり、それでこのビジネスモデルを考案しました」と言い、教育プログラムは安全や法律、障がい者の健康や人権などの視点を踏まえ、インターネットを使ってやりとりできる内容になっている。
2016年、大阪府の「ビジネスプランコンテスト」で受賞、大阪府起業家スタートアッパー事業として認定を受けた。さらに大阪NPOセンターが主催する第9回ソーシャルビジネスプランコンペでも社会課題を解決する事業としてグランプリを受賞した。 志村さんは、愛知県から高槻市に引っ越してきたが、理由は同市には障がい者支援が充実しているからだという。「僕たちは全員に理解してもらおうとは思っていません。こういうのをやっているのも、僕の自己満足とも言えます。ただ、自分の人生において、障がいのある方のために何かをするというのが軸にある。なぜ自分が生まれて来たのか。弟の存在もあり、僕はこれをやるために生まれて来た、と思っています」 業界の課題については「障がい者施設は人手不足、働き手がまず少ないです。優秀な人がどんどん辞めていく。1人で3人くらいを見るのが理想なんですけど、優秀な人が1人で5人くらい見て、頑張り過ぎて、辞めていくという現実があります」と指摘。それを改善していこうと、今後もネットワークを広げ「研修を進めていく中で、障がいについて学んでいただき、身近な人に周知できるようになればこの社会が少し変わると思っています」と力強く話していた。 (文責/フリーライター・北代靖典)