「10秒0台か9秒台でないと勝負にならない」男子100mで東京五輪代表組の惨敗続く異例事態の中で桐生祥秀は3大会連続の五輪キップをつかめるのか?
では桐生がパリ五輪代表をつかむためには、決勝でどれだけのパフォーマンスが必要になるのか。参加標準記録10秒00を突破して優勝すれば「即時内定」するが、突破者がいない場合はワールドランキング(Road to Paris)でターゲットナンバー(56)内に入っている選手が選ばれることになる。 現時点のワールドランキングは栁田大輝(東洋大)が33番目につけており、代表に最も近い。一方の桐生は〝出場圏外〟だ。 ターゲットナンバー内に食い込むのは簡単ではない状況で、パリ五輪代表をつかむには、参加標準記録の10秒00をクリアして「2位以内」に入っておきたいところだ。 なお準決勝1組は東田旺洋(関彰商事)が10秒16(-0.2)でV候補の栁田大輝(東洋大)を0秒04抑えて1着。同2組は前回王者の坂井隆一郎(大阪ガス)が持ち味の鋭いスタートで飛び出して、10秒11(-0.4)の全体トップで通過している。 「今日と明日はたぶん別のレースになると思う」と桐生は読んでおり、「もう10秒0台とか9秒台でないとランキングも上がらないですし、他の選手の調子を考えても、それぐらいのタイムを出さないと勝負できない。今回は何も体調不良がない状態でピッチに立てているので、ここはもうやるしかないと思っています。準決勝からもう2段階上げられるように、明日はしっかり集中したい」と気合十分だ。 桐生のライバルとなるのが前回1位の坂井と同2位の栁田だろう。 「状態的には今シーズン一番いい状態で臨めています。自分はスタートが武器なので、序盤で飛び出して、他の選手を寄せ付けないレースができればいいなと思っています」と坂井がいえば、栁田は「タイムよりも代表を取れる順位を取ることが大切かなと思うので、欲は出さずにそれだけを考えて走りたいと思います」と最終決戦に向けて静かに闘志を燃やしていた。 決勝は坂井が4レーンに入り、右隣りの5レーンに栁田。桐生は8レーンとなる。坂井のロケットスタートをさほど気にせず、自分のレースに集中できるレーンといえそうだ。 また男子100mはメダルを目指す男子4×100mリレーのメンバーを決めるうえでも重要なレースだ。桐生は「3走」で何度も世界を驚かせる快走を見せてきただけに、上位に入ればリレーメンバーとして代表に滑り込む可能性は高い。 京都・洛南高3年時(13年)に衝撃の10秒01を叩き出してから、日本スプリント界のトップ争いを繰り広げてきた桐生。4年前、今年と同じ新潟・デンカビッグスワンスタジアムで開催された日本選手権は10秒22で優勝している。注目の男子100m決勝は本日の午後6時25分スタート。3度目の五輪に向けての大一番が待っている。 (文責・酒井政人/スポーツライター)
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