女子世界戦で髪の毛100グラム分切って計量クリアの珍事
プロボクシングの男女トリプル世界タイトル戦(19日・千葉幕張メッセ)の前日計量が18日、東京・文京区の東京ドームホテルで行われ井岡一翔(30、Reason大貴)が日本人初の4階級制覇に挑戦するWBO世界スーパーフライ級王座決定戦、WBA世界ライトフライ級スーパー王者、京口紘人(25、ワタナベ)の初防衛戦、WBO女子世界スーパーフライ級王座決定戦に出場する6選手が揃って計量をパスした。面白かったのは女子の世界戦だ。美人シングルマザーボクサーの東洋太平洋バンタム級王者、吉田実代(31、EBISEU K's BOX)と世界王座を争うWBOアジア・パシフィック女子フライ級王者のケーシー・モートン(35、アメリカ)が計量をクリアするために驚きの行動に出ていたのである。
トイレで見知らぬ日本人女性に髪の毛カットを手伝ってもらう
え? 髪型変わった? 計量を52.1キロのリミットでクリアしたモートンの肩以上あった髪がオカッパスタイルに変わっていた。 「部屋の体重計が狂っていて(予備計量で)オーバーだったので髪の毛を切りました」 部屋にある簡易型体重計が500グラム狂っていて事前に予備計量を行ったときに200グラムオーバーだった。そこで会場のホテル内のトイレに駆け込んで、まずは排尿などで出すものを出して100グラム減。続いて自らハサミで残り100グラム分の髪の毛を20センチほど切った。トイレの鏡を見ながら自分で行ったが、どうも後ろの髪がうまく切れない。困っていたところに、偶然、見知らぬ日本人女性がトイレに入ってきた。 「最初は私が髪の毛を切っているので驚いた顔をしていましたが、親切にも自分では揃えることのできない後ろの毛をその人が助けて切ってくれたのです。日本人の優しさにとても感謝しています」 モートンの母のナンシーさんは日本人。母の母国の人達の“美しい心”に触れモートンも感激していた。減量に苦しむボクサーがバリカンで丸坊主にしてくる話は、ごくたまにあるが、女子ボクサーが“即席カット“で減量をクリアしたケースは珍しい。おかげで計量をリミットギリギリの52.1キロでパス。モートンはファイティングポーズを取った。 「吉田のことはリスペクトしています。とても可愛い女性。でも私は明日世界王者という夢を実現させるためにリングにあがります。怒りという感情がボクシングと出会って変化しました。勇気づけられました。どんな困難に対しても立ち向かうことの尊さを見せたいの」 モートンはハワイ生まれのアメリカ人だが、フィリピンでも活動しておりWBSSの決勝でWBA、IBF世界バンタム級王者、井上尚弥(大橋)と対戦する元5階級王者、ノニト・ドネアの実父が専属トレーナー。「明日はコーチの言うことに従うだけ」と絶対的な信頼を置いている。戦績は12戦8勝(1KO)1敗3分けで、3月には日本女子ミニマム級王者の日向野知恵(スパイダー根本)に判定勝ちしている。